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4-2. 自動ドア (2)
自動ドアの有名メーカーと言えば国内シェアの半分を占める「ナブコ」が有名ですが、その技術的な特性もあって国内の製造メーカーは9社程度に限られています。ナブコは昭和28年にアメリカのNational Pneumatic社とドアエンジンの技術導入契約を結んだのを契機に、昭和30年代に入ってから徐々に国内の建物に導入され始めました。Pneumaticは「空圧」を意味している様に、当初は空圧式であったり、または油圧式のシステムで、電動式のものは時代が下がってからのこととなります。それ以前には蒸気機関やエレベーターと同じく、軍事目的や産業用に開発された技術で、昭和初期に軍艦に、1926年には山手線の車両に導入されたとの記録が残っているようです。1926年と言えば大正15年に当たりますので、建築に利用される30年以上前のことです。
自動ドアと言えば現在では戸がスライドして開く方式が主流ですが、アメリカでDee HortonとLew Hewittによって発明されたのは1956年(昭和31年)のことになります。正確な資料が残っていないのですが、つまり上述の自動ドアの先駆け達はスライド式ではなくて、折り戸や開き戸といった軸回転系の開閉方式だったのだろうと想像ができます。
4-2. 自動ドア (1)
4. オフィスビルの部分
オフィスビルに限ったことではありませんが、ある程度の人の出入りがある建物に入るエントランスには、現在では自動ドアが当たり前の様についています。
ヨーロッパに居ると自動ドアは早々見かけるものではありません。美術館などの公共施設やデパートといった大型の商業施設に於いても大抵は一般的なスウィングドアが主流です。高級なホテルやブティックでもドアマンがついていたりしてあくまでも人力で対応していたりします。大型のショッピングモールのような相当量の人の出入りがある施設や大型の病院など使用上の要求に応じて設置されるものに限られているかと思います。
なぜヨーロッパでは日本ほど普及していないかは解りませんが(*)、いずれにせよその状況と見比べると、日本では必ずしも必要である箇所以上に、自動ドアというものが慣習的に普及しているように思われます。
*ヨーロッパだと「機械は壊れる」ということが大きいかも知れません。事実、最近、病院通いをすることがあったのですが、途中で急患出入口の自動ドアが壊れてずっと開け放しになっていました。
3-2. フランクロイドライト (5)
この模型とプランから建物の全体が把握できます。Great Workroomは図面の右側の部分です。建物の真中を貫通する道路から自動車でアクセスします。
車寄せからGreat Workroomに向かって右側に吹抜けのエントランスホールがあり、その上部にはホールもあります。車寄せの左側の地上階は駐車場となっていて、中庭を形成する様に敷地の周囲にぐるりとピロティの空間となっています。その中心に後々に設計されたタワーが聳えていて、そこは研究所となっています。
また、ジョンソン・ワックス本社においては、建築に合わせて家具の設計もしています。lily padや建物の全体形に呼応する様な円、半円をモチーフにした天板が隙間を空けて重層するようなデザインです。キャスター付きの椅子は当初は3本足として作られましたが、ライト自身が座って転げ落ちたことから後に4本足のデザインに改められた様です。
家具のスケッチにはそれぞれの立面図とともに、lily padの姿図も後ろに描いています。Great Workroomを始めとするオフィス空間が、建築の構造体のスケールと家具のスケールとの関係の中から思考されていることを示しているスケッチと言えるでしょう。
3-2. フランクロイドライト (4)
ライトはこのようなlily padの構造をGreat Workroomだけでなく建物全体に対して適用しています。Great Workroomではこのlily padは1つしか見えませんが、複数階にわたってこの構造を採用しているので、上下の継ぎ目(ジョイント)の力の伝達が問題となってきます。普通に葉の平面に柱を落としてしまうとピン(点)で結合することとなるため、とても不安定です。そこでライトは、柱を空洞にして葉に到る手前で広がる様な形状にし、上部構造の柱を差し込む構造体としました。そうすることである程度、剛(堅い)結合に近づけることができています。
ライトはこのような構造体のヒントをサボテンから得たという事です。サボテンのどこからヒントを得たのかは定かではないのですが、恐らく内側が水分たっぷりでスカスカなのに対して、外側が堅いということからでしょうか。ライトの建築は度々、有機的建築と言われます。それは落水荘のように自然を取り込み、調和するという意味もあるでしょうし、もう一方では自然の中にある事物からヒントを得ながらデザインをするということもあるかと思います。
3-2. フランクロイドライト (3)
サリヴァンの稿で見てきたオフィス空間と大きく違うのは、サリヴァンのオフィスでは建物全体を個室に分割していたのに対して、このジョンソンワックス本社では1つの大きな空間としてまとめていることです。会社側の要求は今となっては知る良しもありませんが、このようなオープンな大空間の中で執務するスタイルを取っているオフィスとしてはかなり早いものだったと思われます。ただ、2-3でみた19世紀中頃のアンリ・ラブルーストの図書館のように、大空間の中に机を並べて勉強するような空間が出てきていたので、それを例として参照してこのGreat Workroomの構想に到ったのかもしれません。
ラブルーストの図書館も同じですが、このような大空間を窮屈でなく、大らかな空間にまとめあげるためには、その大空間の屋根を支える架構が鍵を握ります。ラブルーストの例で言えば、それを当時最先端の鋳鉄の柱で繊細で包み込む様な空間を実現していました。ライトの柱は鉄筋コンクリート製のものですが一般的な工法のものではなく、鉄の金網で丸柱を補強したので根元で直径23cmという細さを実現できました。このような工法は当時の基準に沿っていなかったので当局から載荷試験を求められ、試験の結果、基準の5倍の強度があるということで建設が認められたという経緯もあります。