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6-1. 机 (2)

恐らくは古代ギリシアや古代ローマ時代でも、学問は存在していましたし、机の様な家具も存在はしていた様に思いますが、記録を辿るとなると難しいようです。そういう意味で「2.オフィスの歴史」の稿にも書いたように、中世に絵として描かれているものが最初の記録と言って良いでしょう。

図6-1-1:Escribano

図6-1-1:Escribano

この絵に書かれている様に15世紀にグーデンベルグの活版印刷が発明されるまでは、本は写本によって作られてきました。写本を前提とした机の形式は先述の通りです。写本は非常に重かったので、机もそれを支えるために重厚でかなりがっしりしたものでした。

図6-1-2:ルイ13世様式の机

図6-1-2:ルイ13世様式の机

印刷技術の発明に前後して、ルネサンスの時代が到来しています。写本が主な用途でなくなった机は、現在に近い形のものになっています。構造は少し軽くなり、木彫により装飾が施されています。一番の大きな変化は引出しがついていることでしょう。その中はインク壷、吸い取り紙、パウダートレイ、そしてペンを入れられるように分かれていたとのことです。この設えは当然、ダイニングテーブルにはないもので、機能的な側面から2つの家具を区別している意匠といえるでしょう。

6-1. 机 (1)

6. オフィスの設え

「2.オフィスの歴史」の稿でも触れましたが、フランス語でいう[bureau](ビュロー)という言葉は「オフィス」と「オフィスの机」という2つの意味があります。ある部屋をオフィス空間足らしめる要素として「机」というものは欠かせないものです。
オフィスビルといった時に、一般的にはそこにあるのはがらんとした一室空間あるのみで(これについては3-3.ミース・ファン・デル・ローエの稿の「ユニバーサル・スペース」参照)、使い様によっては住宅としても使えなくもないものです。そこにテナントが引っ越してきて、オフィスとしての「設え」を施すことによって、初めてオフィスらしくなるものです。
本章ではこのようにオフィスをオフィス空間足らしめる「設え」について考察していきます。まずは「机」についてです。今回もまずは歴史的な視点から「机」を掘り下げていこうかと思います。既に「2.オフィスの歴史」にてルイ13様式あたりまで簡単に書いていますが、もう少し詳察してみます。

5-1. ガラス (10)

本稿の冒頭にも書きましたが、現代社会における環境問題への関心の高まりを受けて、ガラスにも様々な配慮がされています。建築物において壁や屋根を不透明な素材で空間を仕切る場合と比較して、ガラスで内外を分断する窓は最も熱負荷がかかるものです。特に現代のオフィス空間のように開放的なガラス張りの空間を実現すると、一方で室内環境には大きなしわ寄せを与えてしまいます。そうなると、ガラス(およびサッシ)そのものの品質を改良する以外にはありません。
断熱性能を向上させるために最も用いられているものは複層ガラスで、フロートガラスを2枚用意し、スペーサーで一定の隙間を空けてそこに乾燥空気を充填しているものです。乾燥空気を断熱材としての役割を期待してのことです。また、これらのガラスの種類を変えることで、更に複合的な機能を付与することもされています。これらのガラスの1枚を熱線反射ガラスとすれば西日の直射を防ぐことが期待できますし、網入りガラスや耐熱強化ガラスなどを併せることも可能です。
このように外側からぱっと見るとただの1枚に見えるガラスも、実は場所によって、また要求されている機能によって色々な使い分けをされています。建築の意匠表現にガラスは不可欠のものですし、社会のニーズに伴って、今後も様々なガラスが考案されることでしょう。

5-1. ガラス (9)

熱によるガラスの破壊を防ぐには、熱膨張を抑えるか熱伝導を良くするかということになりますが、ガラスの性質上、熱伝導を上げることは不可能なようです。一方で熱膨張を抑えることは、結晶化ガラスというものをガラス内に分散させることによって可能とのことです。ガラスは非晶質であるということを書きましたが、水が0℃〜4℃までは熱で膨張せずに収縮する(つまり水の体積は4℃が一番小さい)、といったことに近い物性をもった結晶化したガラスを混ぜることで耐熱性能を備えたガラスを実現しているとのことです。建物の延焼の恐れのある範囲にある開口部は火災時に火が廻るのを防ぐために「防火設備」とすること、という規定があるのですが、透明な開口部でその防火設備として求められる性能を満たすものがこの耐熱強化ガラスです。
同様な目的で網入りガラスが用いられることもあります。網入りガラスの場合、火災時にガラスは割れてしまうのですが、内包された金網によってガラスが金網から剥離しないので、火が廻るのを防ぐ役割を満たせるというわけです。

5-1. ガラス (8)

コップなども含めてガラスの大きな特徴は「割れる」ということです。「割れる」ということは、硬くて粘りがない物質が一瞬にその結びつきを失うということですが、その原因は外から強い衝撃を受けるか、急激に温度変化するかのどちらかです。日常生活の中でガラスが割れるといえば前者だと思います(グラスを落としたり)。後者は例えば、冷凍庫にグラスを入れておいて、熱湯を注いで割れるということです。物質は熱によって膨張収縮しますが、ガラスの場合、急に熱が加わった時に表面は膨張するけれども、それ以外の場所に熱がすぐに伝わらなくてそのままになってしますので、そのひずみで割れてしまうということです。これが建築物の場合、火災時にはガラスに急激に熱が加わることになりますので、熱膨張によって普通のガラスでは破壊されてしまいますが、火を廻らない様にする、あるいは割れて人に危害を加えない様にするためにも、熱に耐えられるガラスが場所によっては求められます。