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8-1. 高さ制限 (2)

前述の通り、高さの制限はその建物の建つ地域によって違いますが、それらは都市計画的な視点から位置づけられています。その代表例は「用途地域」と呼ばれるもので、住宅地ならば第一種住居専用地域、中高層住居専用地域、商業地ならば近隣商業地域、また工業地域など12種類の用途地域が定められています。高さの制限はそれぞれの用途地域に適応したものとなっています。
高さ制限は大きく「絶対高さ制限」と「斜線制限」、「高度地区」による高さの制限(高度地区は各自治体がそのエリアを定める)、あるいは「日影規制」があります。絶対高さ制限については、地面(正確な言い方をすれば、平均地盤面)から何mの高さまで建てて良い、といったような単純な制限で、例えば第一種住居専用地域ならば10m、あるいは12mまでなら建てても良いですよ、ということになります。この地域だと3階建て、あるいは4階建てまでは建てられる、ということが1つの目安として分かります。

8-1. 高さ制限 (1)

8. オフィスビルの法律

オフィスビルに限ったことではありませんが、建築物を建てる時には様々な法令、規則を遵守する必要があります。その最もベースとなる法律は建築基準法、及び施行令です。それ以外にも、建築士法や都市計画法、建設業法、景観法、バリアフリー新法など多岐にわたります。また、各自治体で定めている条例や基準法を運用するにあたり国土交通省が出している法律解釈にあたる告示など細かい決まりが多岐に渡ります。当然のことなのですが、設計者は建物を法令に準拠したかたちで設計するわけですが、そこがなかなか大変なポイントでもあります。本稿ではあまり一般の方には馴染みのないであろう、これら建築関連法などをご紹介する事で、なぜ世の中に存在する建物があのようになっているのか、ということを理解するきっかけになればと思います。
まずは高さ制限についてです。建築基準法には建物の高さを制限する条項があります。戸建ての住宅地にいきなり超高層マンションが建つと日照やビル風を考えると住環境の質が担保できなくなります。このような事が無いように地域によって建物の高さをコントロールする規則が高さ制限です。

6-2. 椅子 (10)

グレーチェアは身体性というものを発展させて、人間工学という視点からデザインしているという意味では椅子の系譜を継承しているデザインと考えても良さそうです。その後、座や肘掛けが上下する機構やバネで背のショックを吸収したりと、人間の身体に合わせた様々な改良がなされています。その1つの頂点とも言える椅子がアーロンチェアです。

図6-2-21:アーロンチェア

図6-2-21:アーロンチェア

1994年にハーマン・ミラー社から発売されたアーロンチェアは、使用者に合わせて細かくカスタマイズが出来るのが特徴で、一般的な99%の人が快適に使用出来るとのことです。ペリクルと呼ばれるメッシュ素材が座と背に使用されていたり、人間工学的に骨盤を支持して長時間座っていても疲れないように設計されているということです。事務用の椅子とはいえ1脚10万円以上もする高価なものであるということもあり、どちらかと言えば一般の事務員よりも会社の上層部の人に利用されているイメージが強く、テレビドラマや映画などでも時折その様なかたちで登場します。つまり、身体性から人間工学を追求してきた椅子であるとはいえ、社会で消費される際には常に椅子につきまとうある種の権威の象徴性は現代社会においても抜けきれていないということだと思います。

6-2. 椅子 (9)

以前の机の記事でもフランスの18世紀の様式の変遷を簡単に紹介しましたが、椅子も同様に政治的指導者の名を冠した各様式が存在しています。ルイ13世様式、ルイ14世様式、ルイ15西洋式などです。

図6-2-17:ルイ13世様式

図6-2-17:ルイ13世様式

図6-2-18:ルイ14世様式

図6-2-18:ルイ14世様式

図6-2-19:ルイ15世様式

図6-2-19:ルイ15世様式

その後、アールヌーボーやアールデコのデザインがはやると、当然、椅子もその影響を受けて動植物をモチーフに装飾画施されたり、幾何学をベーストしたデザインが採用されました。
ところで、ここまで紹介してきた椅子は事務用の椅子と限定してはいませんでした。いわゆる現在にも通ずる様なオフィス用の椅子は欧米では戦前から存在していたようですが、(私が把握している狭い範囲で)日本には戦後GHQがもたらしたものと考えられているようです。いわゆるグレー色のスチール製の椅子です。

図6-2-20:グレーチェア

図6-2-20:グレーチェア

当時の米軍ではそれぞれ軍によってテーマカラーが決まっており、たまたま陸軍のグレーを採用したために全てグレーになった、それは米国の塗料会社が落ち着く色だからという理由で選んだという説があるようです。

6-2. 椅子 (8)

中世がキリスト教の神中心の時代とすれば、ルネサンスは古代ギリシア、古代ローマを復興した人間中心の時代と言われることが度々あります。椅子における人の身体性の発見はその大きな流れとは無縁ではないように思います。
木の板に直接座ることは当然、堅くて座り心地の良いものではありませんでしたので、クッションを座面に敷くことはかなり前からやっていたようです。そのクッションの質がまたそこに座る人の格を示していたということは、椅子そのものと変わりません。
ところが17世紀に入り、座面に直接クッションを合体させる技術[upholstery]が大きく発展しました。これも身体的な快楽が椅子に反映された結果と言えます。その他、リクライニング・チェアが製作されたり、カクトワールと同様に女性のスカートに配慮して肘掛けをなくしたバック・スツールや、肘掛けを奥の方に引っ込めてスカートが引っかからないようにした安楽椅子がデザインされています。

図6-2-15:バック・スツール

図6-2-15:バック・スツール

図6-2-16:18世紀の安楽椅子

図6-2-16:18世紀の安楽椅子