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5-2. 石 (2)

対比的にみれば、日本は木造の文化、それに対して西欧は石の文化と言っても大きく間違いは無いかと思います。日本の場合、石材が使われているのは、石垣などの外構用の素材や建物の基礎としての礎石など建物自体から少し離れた部位です。(古墳時代の石室の様な例外はありますが。)

図5-2-1:石垣

図5-2-1:石垣

図5-2-2:礎石

図5-2-2:礎石

一方で西欧では古代より石が建築物の構造材として活用されてきました。その最も有名な例は古代ギリシアのパルテノンでしょう。その他、ローマのコロッセオや(欧州ではありませんが)インドのタージマハルなども石、それも大理石で建築されています。

図5-2-3:パルテノン

図5-2-3:パルテノン

現代ではコストの面から石の組積造によって新築の建築物を建てることは殆ど見ることはありませんが、それでも19世紀のオスマニアンの建築などはライムストーンの組積造で出来ていますので、西欧では随分と長い間、構造材として石の利用がされていました。
ところで一言で石と言っても、その種類は自然のものであるということもあり、相当な種類が存在しています。まず、
第一の大分類としてはその石の成り立ちから、火成岩、堆積岩、変成岩の3種類があるとのことです。

5-2. 石 (1)

5. オフィスビルの素材

オフィスビルの執務空間ではあまり石が使われるということはありませんが、エントランスの壁や床、建物の外壁にはよく使われます。それは機能的に石が必要であるというよりも、石のもつ素材のイメージ、高級感や重厚感、ある種の安定した感じがオフィスビルの顔としてふさわしいということなのでしょう。事実、もちろん石の素材にもよりますが、単価でいえばタイルやセメント板よりは高価ですし、事実、重量的に重いということが重厚感と関係はあるように思えます。
また、石は100%自然のものです。採石場で切り出してきて、板状に加工し、表面の仕上げを調整するだけで、そのまま建物に取り付きます。現代建築においてこのように自然素材のまま使われるのは、木と石くらいのものかもしれません。中層以上のオフィスビルが木造で作られることはないでしょうし、火災予防から構造以外の部位にも木が使われることは多くありません。それを考慮すると石がオフィスビルの中の唯一の自然素材である場合がほとんどかも知れません。

8-1. 高さ制限 (10)

総合設計制度以外にもう1つ高さ制限の緩和を受けられるのが、「地区計画」がある場合です。東京の23区内の場合、各区が地域の実情に合わせて、新築の建物に一定の処置を施せば容積率や高さ制限を緩和しますよ、というものです。
例えば中央区の場合、日本橋や銀座、月島などそれぞれ地域性の強い都市空間が形成されていることもあり、それの保持、あるいは改良を目的としてそれぞれの地区計画が設定されています。
例えば銀座の場合きれいな街並がそのエリアの大きな売りとなっています。そこに斜線制限に準じて上にいくほど段々にセットバックしてしまっては街並が壊されてしまうので、前面道路から建物をセットバックさせれば、高さ制限を緩和して、かつ容積率も増加しても良い、という地区計画が設定されています。また、月島の場合は古くからの路地がありますが、都市防災の観点からみれば狭い道に面した木造の家屋は弱点です。この場合は耐火建築物への建替えを促進し、道を広げるように建物をセットバックすることが防災に繋がるために、耐火建築物とセットバックを行えば斜線や容積率の緩和が受けられるという制度設計になっています。

8-1. 高さ制限 (9)

ここまで数種類の高さ制限について述べて来ましたが、感の良い方ならお気づきかも知れません、これら高さ制限に当てはまらない建物があるということを。例えば、六本木ヒルズや西新宿の超高層ビル群、あれらは普通に高さ制限をかけると成立しない高さを誇っていますが、現に建っています。これらの高さ制限を回避する幾つかの方法があります。
その1つは「総合設計制度」です。500m2以上という比較的大きな敷地に対して敷地いっぱいに建物を建てるのではなく、建物の足元に公開空地と呼ばれる一般の方が立ち入れる場所を整備することで、道路斜線や隣地斜線を緩和、つまり無くしても良い、という精度です。さらに容積率も上乗せすることが可能なので、開発側の事業としてメリットは大きいですし、一般市民も地上レベルの歩行空間が拡大するので、環境的に良くなるだろうと考えられています。
また、東京都の場合では都心の夜間人口の減少(ドーナツ化現象)への対応策として、総合設計制度で一定の割合以上を住宅とすると、さらに容積率を増加出来るという内容もあります。六本木ヒルズやミッドタウンなど大型の開発に併せて住宅棟がつくられているのはそのためなのです。

8-1. 高さ制限 (8)

「高度地区」の制限の内容をみてみるとかなり「斜線制限」に似通った内容となっています。「高度利用地区」という土地の高度利用を目的とした内容もありますが、主たる内容はほぼ「斜線制限」と変わりがないでしょう。

図8-1-2:高度地区(渋谷区)

図8-1-2:高度地区(渋谷区)

「高度地区」は都市計画法第8条によって定められていますが、この第8条ではその他、都市計画にまつわる地域地区についても位置づけています。本稿で度々言及している住居地域や商業地域といった「用途地域」もその地域地区の1つですし、景観地区、風致地区、防火地域と準防火地域なども、この都市計画法第8条によって定められています。
「用途地域」も都市計画法で定められてそれが「斜線制限」などに繋がっているので、「高度地区」の存在意義が分かり難いものとなっていますが、そもそも法の成り立ちとしてこれらは大きく違います。「斜線制限」はあくまでもその制限の内容は建築基準法で定められていて、その適用範囲を都市計画法に則るという話ですが、「高度地区」についてはその制限の内容が法文上では明確に謳われている訳ではなく、その対象となるエリアとともに各自治体によって定められます。そういう意味で、建築基準法で定められた画一的な制限内容から、より地域の事情を反映した制限内容にできるというメリットがあるのでしょう。