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4-6. 壁 (3)

壁を立てると当然ですが、内側と外側が出来ますが、実際に外部に面する壁はいわゆる外壁です。風雨を避けるのはもちろん、都市部においては火災を予防するためにも外壁の性能は求められます。また意匠上、外観を構成する要素でもあります。
都市計画によって指定されている区域にもよりますが、市街地で耐火建築物としての性能を求められる場合には、外壁には耐火構造であることが求められます。耐火構造というのは、所定の部位が火災で一定の時間熱を加えられたときにも、非損傷性、遮熱性、遮炎性が担保出来ているということです。具体的には一定以上の厚みのコンクリートであったり、ラスモルタル、セメント板であったりします。住宅など小規模の建物に比べれば、オフィスビルのような一定以上の規模の建物ではこのような火災に対して求められる性能は高いので、意匠的には制限されてしまっています。
また、外壁には扉や窓といった開口部が穿たれますが、これらに対しても火災予防の観点から色々な水準で規制が欠けられています。その詳細はここでは割愛しますが、いずれにせよ建物の外観は様々な法的条件をクリアした上で成立していますので、それらを念頭に建物を眺めるだけで様々な発見があるものです。

4-6. 壁 (2)

建物の構造形式によっては、壁が構造的な役割を担っていることもあります。鉄筋コンクリート造の壁構造だと当然、壁が垂直、水平力を受けますし、ラーメン構造や一般的な鉄骨の軸組構造だと線材を組み合わせたような架構形式なので、その部分には荷重はかかりませんが、部分的にRCの壁をつくって水平力を負担するようなことも考えられます。これらは構造壁と呼ばれます。建物の構造の一部を担っているということで、インテリアを改装する際にも簡単に壊すことは出来ない壁です。
一方で構造壁ではなくて、スペースを区切るためだけの壁は間仕切り壁と呼ばれます。現在では殆どの間仕切り壁は軽鉄と呼ばれる金属製の壁下地材を組み、そこに石膏ボードや珪酸カルシウム板などを貼って、塗装あるいは壁紙などをして仕上げます。

図4-6-1:軽鉄壁下地

図4-6-1:軽鉄壁下地

過去にはベニヤ板などで間仕切り壁を作っていたようですが、火災予防のための内装制限がかかっていることが多いために、不燃材である軽鉄下地と不燃のボードで間仕切り壁を構成するのが現在では主流となりました。

4-6. 壁 (1)

4. オフィスビルの部分

室を構成する部分について、床、天井に続き、次は壁に関する考察です。
床と天井は水平面であったのに対して、言わずもがな壁は垂直面です。室を抽象的な直方体と想定すると、6面のうちの4面は壁で占められています。また、その室の中に人を想定すると、人は寝ていない限り概ね水平方向に視線を向けていますので、視野の多くにおいて壁面が占められているのではないでしょうか。
また前回の天井と屋根の議論にもあったように、建築の外側と内側という意味合いにおいては、壁も室内に面した壁と屋外に面した壁ということで、意味も機能も、そもそも素材も違います。とはいえ、呼称はというと両者とも「壁」で一括りに出来てしまいます。強いて言うならば、外側に面した壁を外壁と呼びますが、それに対して室内側の壁を内壁と呼ぶことは稀で、やはり壁は壁です。
これは英語でもフランス語でも同じことで、屋根と天井はそれぞれ、”roof””ceiling”(英語)、”toiture””plafond”(フランス語)と呼ばれますが、壁に関しては日本語と同じく特に外も内も分け隔てなく”wall”であったり、”mur”であったりします。

4-5. 天井と屋根 (5)

天井に様々な設備機器が取り付いているというのと同じように、屋上には更にヘビーな設備機器が載っています。抽象のオフィスビルでは相対的にそれらのサイズが大きくなってしまいますので、屋上庭園どころか、屋上のほとんどのスペースは設備で込み合っていることは普通です。主なモノとしては、6600Vという高圧で受電した電気を実際に利用する100Vや200Vに変換するキュービクルや空調屋外機、避雷針などが考えられます。またエレベーターのカゴを吊る為のスペースとしてオーバーヘッドと呼ばれる部分が屋上部分にせり出してきたり、キュービクルに繋ぐ幹線や空調屋外機の冷媒などを取り出す為の鳩小屋と呼ばれる屋上に突出した部分などがあります。また下階に飲食店が入居しているようなビルでは給排気のダクトが屋上まで上がっていることもあるでしょう。
現代の中小規模のビルにおいては、屋上庭園なんて夢みたいな話で、実情としては設備機器で満たされるとても実際的な場所となっています。建物の熱負荷を下げる為に屋上緑化が推奨されていたりもしますが、現実的には現代の設備機器の有り様を変えなければ当分は屋上緑化が入り込む余地がなさそうです。

図4-5-4:オフィスビルの屋上

図4-5-4:オフィスビルの屋上

4-5. 天井と屋根 (4)

みなさんは中小規模のオフィスビルの屋上に上った事はあるでしょうか?戸建ての住宅などとは違って、オフィスビルでは勾配屋根である事は少なく、ほとんどがフラットな屋根をしています。元来、屋根が傾斜をしていたのは、降って来た雨水を処理するためであり、また屋根を支える構造的に三角形のトラス状の架構とする事が理に適っているためです。近代以降、鉄筋コンクリート造や鉄骨造が発明されたことや防水技術の発展により、フラットな屋根が可能になりました。
ル•コルビュジェが近代5原則の1つとして「屋上庭園」を提唱しましたが、それもこれらの技術的な進化が前提となってのことです。マルセイユにあるユニテ・ダビタシオンの屋上を見れば分かりますが、それは本来的にはまさに庭園としての屋上が想定されていました。住人が集える2つ目の大地として、多様なアクティビティが想定されていました。

図4-5-3:ユニテ・ダビタシオン

図4-5-3:ユニテ・ダビタシオン

しかし、コルビュジェがそれらを提起していたのは、今となっては100年近く前です。その時には家庭用電気はあまり普及していなかったでしょうし、ましてはエアコンなんてなかった時代です。