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8-3. 火災 (12)
最また避難階段は屋外に作ることが出来ますが、階段の稿でも書きましたが、屋外避難階段メリットは容積対象とならないということで、多くの中小のオフィスビルがその規定を利用して、有効に室内の面積を利用しています。その場合の構造は屋内の場合と同様に、出入口は防火設備とするといったことや、階段から2m以内の範囲の外壁には1m2以上の開口部は設けられないといったことです。また「周囲が十分に外気に開放されていること」という要件があるのですが、法文上はここまでしか書かれておらず、定義が曖昧です。実際には東京都や区といった特定行政庁が個別に判断していて、例えば階段の外周の1/2以上が外気に接していて、かつ敷地境界から50cm以上離れていること、といったことで運用されています。
また特別避難階段は、さらに構造上に安全への配慮がなされています。超高層マンションやビルなどを考えれば、階段のつくりがいかに重要かは想像に難くありません。特別避難階段の場合には屋内のみとなっていて、階段に入る手前に付室あるいはバルコニーを作ることによって、火の廻りに対してさらにワンクッション隔てるということと、付室のところで廻ってきた煙を外に出して階段室内に廻らないようにするという2点が避難階段に加える主な要件です。
ここまで長々と避難に関する規定について記述してきましたが、これらもまだ規定の一部を書いているに過ぎません。日本では歴史的にかなり火災を被ってきたわけで、それが建築基準法に反映されてきたわけです。それでも完全には火災の被害は無くならないので、未だに度々、細かな規定の変更はなされているのが現状です。
8-3. 火災 (11)
最後にこれら直通階段の種類とその構造上の定義に触れておきたいと思います。(もはや「火災」の項よりも、「4-8.階段」の項の方が適切な内容かもしれませんが…。)
被災時に階段は避難上有効である、つまり円滑に避難出来るような構造となっていなければなりません。一定以上の状況の場合、それらを普通の直通階段とは区別して、避難階段、あるいは特別避難階段と位置づけて、その階段の構造を規定しています。2直階段の場合と同様に避難階段の場合にもデパートのような物販店舗の場合に別枠で規定が定められていますが、その他の建物の場合には5階以上の階、あるいは地下2階以下に通じる直通階段は避難階段としなければならず、さらに15階階以上の階、あるいは地下3階以下の階に通じる直通階段は特別避難階段としなければなりません。
避難階段には屋内と屋外の2通りが想定されていて、屋内の場合にはその階段を耐火構造の壁で囲い、内装は下地・仕上げ共に不燃材とします。階段に出入りする扉は防火設備として、外壁に設ける開口部は90cm以上隔てなければならず、屋内に面する窓は1m2以内として網入りガラスのはめ殺しの防火設備にしなくてはいけない、などの細かな規定がなされています。普通の直通階段にはこれらの様な規定はありませんので、5階建て以上の建物の階段と4階以下のものはかなりつくりが違ってくるということになります。
8-3. 火災 (10)
また一定の規模以上、あるいは用途によって直通階段が2つ必要なことがあります(2直階段)。いわゆる2方向避難と呼ばれている要件で、自分がいる位置と直通階段の間が燃えていたとしても、その逆方向で地上への避難が出来るようにするということです。用途的には先述と同様に映画館や劇場、一定規模以上のデパートなどに2直階段が義務づけられていて、また病院やホテル、共同住宅なども当該階が100m2あるいは200m2以上といった規模の場合に義務づけられています。いずれも大人数がその階に滞在しているということが想定されています。
また、その他の用途でも6階以上の階には原則義務づけられています。これは当然、火は上に廻りますので、上層の階の方が被災のリスクが高いためです。ここで原則と書いたのは一定の条件を満たせば、2つのうち1つの避難階段は「避難バルコニー」で代用しても良いということになっているからです。ここでは詳細には立ち入りませんが、よくマンションのバルコニーなどで足元に避難用のハシゴが設置されています。それが階段に代わる避難上有効なルートとされています。
8-3. 火災 (9)
また避難の安全上の観点から「直通階段」という概念があります。これはその階段を下りて行って直接、地上の屋外に出られる階段ということです。当たり前のことのように思いますが、火災が起こっていてパニックになっているときに、階段を下りて行ったのに屋外に出られなかった、なんてことがあったら本当に大変なことです。
ちなみに一定規模以上の建物には誘導灯(緑色のランプで人が走っているピクトグラム)の設置がなされますが、誘導灯は直通階段など避難上有効なルートに誘導するためのものです。
話がズレました。階段が直通階段となるには地上の屋外に出られるということがありますが、規模が大きな建物の場合、その階段までの距離が遠すぎて避難出来ないということでは本末転倒ですので、建物の各部分から直通階段までの距離が条件により定められています。その条件は主に建物の用途、主要構造部が耐火構造あるいは不燃材か否か、その階の階数で定められていて、例えばデパートの場合は建物の各部分から直通階段までの距離は30m以内にしなければならないということになっています。
8-3. 火災 (8)
ここまでは周辺の火災をもらわない防火、あるいは火災が起こった際に耐える耐火という2つの観点から論じてきました。火災が起こった際には建物が耐えられたとしても、何はともあれそこにいる人は避難しなくてはなりません。災害時に円滑に避難が出来るように、建築基準法あるいは東京都の場合ならば安全条例などで様々な規定が定められています。ここではそのエッセンスの一部を紹介します。
建物が複数階に渡る場合は階段が当然、建物には階段がついていますが、避難の観点から階段にはいくつかの規制が複合的にかかっています。1つには建物の使用人数が多い様な用途、または規模の場合は、階段幅を大きくしなくてはいけません。避難時には室内に滞在している人々が一気に階段に集まるために混雑しがちです。用途的には学校や劇場など、デパートなどの物販店舗ならば1500m2以上の床面積の場合には、140cm以上の階段の幅が必要となります。よくよく思い出してみると、デパートや学校の階段はゆったりと作られていますね。