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4-12. 執務空間 (7)
そしてこのフリーアドレスをより極端にしているのが、ノマドワーカーと言われている人たちで、もはやオフィスが必要ないというか、ノートパソコン1つでどこでもオフィスにしてしまいます。ある程度の充電があれば、wifiが飛んでなくてもインターネット環境も携帯電話からデザリングで持ってくれば十分仕事ができてしまうというわけです。
このようなワークスタイル、よくよく考えてみると特定の業種には古くからあるかもしれません。それは例えば作家です。よく歴史ある旅館などに行くと過去の文豪が一定の期間宿泊してある作品を書き上げた、という話がありますが、あれは紙とペンだけ持っていってどこでも仕事ができるノマドワーカーのはしりかもしれません。あるいは19世紀以降、室内で仕事をしていた画家がイーゼルを外に持ち出して、目の前の風景を描くようになったのも同じようなことかもしれません。つまり自らが身を置く環境を変えることによって刺激を与えて、日常とは違った形のクリエイティブな仕事をするということだと思います。そういう観点からノマドワーカーを考えてみると、従来のオフィス空間のあり方も再考する価値がありそうな気がしてきます。
4-12. 執務空間 (6)
先の稿でオープンスタイルやキュービクルといったデスクのレイアウトについて簡単に書きました。それらデスクのレイアウトはワーキングスタイルが大きく関わるところですが、業種によっては今や紙の書類を使わないで全てパソコン上でこなしてしまうような仕事もあります。情報収集もLANケーブルで繋がれていなくても、無線LANが飛んでいればある特定の場所に縛られることもありません。そんな状況で現れてきたオフィスのスタイルがフリーアドレスオフィスと呼ばれるもので、オフィス空間には適当にデスクと椅子が散りばめられているだけ。あとは各人が適宜、自分の好きな席に座って仕事をするという形です。
このようなワークスタイルを実現できる業種はまだ限られているようで、やはりIT系の業種など比較的新しいタイプの仕事が適応しやすいようですが、今後もこの類いのスタイルのオフィスが増えていくのではないでしょうか。
4-12. 執務空間 (5)
執務スペースにおけるデスクのレイアウトや空間の仕切り方によるいくつかのタイプが見いだせるのと同様に、ミーティングスペースにもいくつかのタイプがあると言えます。
ミーティングスペースは比較的囲われた場所が多いでしょうが、それは周辺から遮音してミーティングスペース内の声が聞かれないように、あるいは逆に周囲の音が聞こえないようにするためであったり、お客様を迎えた時に周囲の視線が気にならないようにといった要請があるかと思います。ミーティングスペースの場合にはサイズによって付帯する設備も変わってきて、特に大人数が入るような場所だとプロジェクターを使ってプレゼンテーションしたりするようなこともあるでしょう。
逆に社内のこじんまりした打ち合わせの場合は囲われたミーティングスペースは仰々しいので、オープンな場所で小さなテーブルを囲う方が良いかもしれません。それらは執務スペースと同様に業態によって適切な場所のあり方があると思います。
4-12. 執務空間 (4)
このように大きな空間に机を並べるというのは、オープンオフィスと呼ばれるスタイルで、現在の日本のオフィスの主流と言っても良いかと思います。違うのは机を互いに付けて座って、部長や課長といった管理職ポジションの人がお誕生日席的に皆を見渡せる方向に机が向いているというのが典型だったように思います。
また低めの衝立を利用してプライバシーを高めるスタイルもあり、数名ごとに衝立てで囲うチームスペース型や一人一人で囲うキュービクル型があります。そこで扱う情報の機密性が高かったり、集中力を要する仕事の場合はこのような囲われるタイプのオフィスが良いとされています。
また欧州では比較的多いように思いますが、完全に各オフィスが個室化されているプライベートオフィス、あるいはシェアードオフィスという数人で個室を使うタイプのオフィスがあります。これは古い建物をオフィスとして利用した時に、そもそも空間が細かく個室として分かれているために、必然的にそのように使われているということがあります。日本だと個室は社長など重役クラスに与えられる特権というイメージがありますが、フランスだと比較的目の当たりにする光景だと思います。
4-12. 執務空間 (3)
このようにオフィス内にどのようなスペースが用意されるかは、働き方などによりますが、執務スペース内のデザインも同様にその会社のスタイルに依ることでしょう。
上の写真は2次大戦前のアメリカのとあるオフィスの風景ですが、大空間に一定の間隔を空けて一方向に机を向けて整列させています。机の上には何冊かの本、ランプ、席の右側にはタイプライターが置かれていて、殆どの人はペンを握って書類の作成に没頭しています。こちらの部署は資料を分別して、カタログ化する仕事をしていたそうです。
このように大空間で一方向に机を向けて、十分な間隔を開けて座るというのは近代のオフィスの一つの特徴だったように思います。以前にも別の稿で紹介した、1939年のジョンソンワックス本社も同様なスタイルが取られています。