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9-3. 色 (1)
9. その他のこと
今回はオフィスビルに限ったことではないですが、建物に関わる色について考えたいと思います。
先日、筆者は遅ればせながら「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画を観ました。1958年の港区愛宕付近を舞台にした映画でストーリーが進むに従って東京タワーの建設が進んでいくのが印象的です。最近ではスカイツリーが徐々に建設されていく風景を見ることも出来ましたが、東京タワー建設当時の木造の低層家屋が並ぶ風景の中に赤い東京タワーが立ち上がるプロセスを見るのは、既に都市に高層ビルが建ち並んでいる現在と比べて随分と心境が違ったことでしょう。
上の写真でもそうですが、実際の体験としてはやはり上述の通り既知のスケールを超えた建造物が建設されたということでのインパクトは相当なものだったと思いますが、ちょっと違う角度で見てみると、グレーやあせたような色の都市の中に赤い東京タワーが青空を背景に聳えているというのは映画的には非常に印象的なカットとして演出されていたなと思います。
4-13. 電気設備 (8)
LAN設備については、過去にはISDNやADSLといった電話回線経由のインターネットが主流でしたが、昨今では光通信設備を入れておくのが一般的です。光通信用のケーブルを電話とともに敷地内に引込んで、電話と同じくMDFまで繋いでおきます。その後は建築工事としては通線をしていない空の配管だけ引いておいて、簡単に通船できるようにしておいて、テナントの要望に応じて各事務所まで通線するというやり方をとります。
残る設備項目について、ITV設備、インターホン設備、機械警備設備などはセキュリティに関する設備工事と考えてよいでしょう。インターホン設備は外部からの来訪者を制御するということで、玄関に設置される集合玄関機から室内側に設置される親機を繋ぎます。また来訪者と会話が出来る以外に、解錠ボタンで鍵をコントロールできます。ここまでは1つの独立した制御です。
一方で警備については、警備会社に請け負ってもらう部分があります。ITV(防犯カメラ)設備や機械警備設備(人感センサーなど)は警備会社が関連する工事です。ITVは一度設置したら継続的に映し続けるというのが基本ですが、機械警備は各人がカードで警備を入切できるだけでなく、ドアの解錠を制御できるようにもします。ここでシステム的には違いますが、インターホン設備と制御が重なってくることもあったりするので、鍵の扱いは意外と複雑になってくるので、運用と重ねてよくよく整理する必要があります。
4-13. 電気設備 (7)
先に挙げた項目別で進めるならば、続いては電話設備、LAN設備、放送設備、ITV設備、テレビ共聴設備、インターホン設備と、いわゆる通信設備の部類のものが続きます。
現在では携帯電話が普及して、個人宅における固定電話設備の重要度はかなり低くなっているといっても良いでしょうが、会社においては各人が携帯電話を持っていたとしても相変わらず固定電話の需要は変わらないと言っても良いでしょう。電話設備については敷地外からNTTの回線を引いて、それを各オフィスに分配するという感じで、電気における分電盤的な役割をする盤が必要になってきます。それを通称MDF(Main Distribute Frame)、すなわち主配線盤と呼ばれるものです。きちんとしたスチール製のボックスに入れられている場合もありますし、下図のようにベニヤ板を基盤として配線するものもあります。
例えば10フロアあるオフィスビルでそれぞれ10回線分の電話を引くとすると、100回線分になる訳ですが、それが物理的な大きさとしてMDFのサイズに反映されます。例えば、そのビルの1フロアにコールセンターのような大量の電話回線を使うような業種がテナントに入った時には大変です。面積あたり通常の数倍以上の回線を使うことになります。ある程度の業種の幅を見込んで、このような電話回線の数も想定するのですが、コールセンターのような業態をテナントとして受け入れるにはそれなりの設備側のスペックが必要になるということです。
4-13. 電気設備 (6)
キュービクルで変圧されて100Vないし200Vになった電気は直接送り込まれる動力でなければ、一般的には各階毎などにある分電盤に一旦送られます。
住宅でも電柱などから取り込んだ電気はまずは分電盤に接続されて、そこから配電されます。事務所ビルでも同じく一旦、分電盤で電気を受けてから、そこからコンセントや電灯など場所ごとにブレーカーを付けて配電されます。電灯・コンセント工事では分電盤以降の低圧の器具に関する工事になります。
電灯工事では一般的な照明の他に防災上、建築基準法や消防法で求められている誘導灯や停電しても電池で作動する非常用照明といった工事があります。
コンセント設備ではまさにコンセントを壁に設置して通線する工事ですが、昨今のオフィスビルでは事務室内は多くがOAフロアとなっていて、床下まで線を引いておいて建築の工事としてはそこで止めておきます。一般的にはその後に入るテナントの工事によって、テナント側が自らのニーズに合わせて好きな位置にコンセントを出してきたり、床にフロアコンセントを配置したりします。
4-13. 電気設備 (5)
「幹線・動力設備工事」のうち、「幹線」はこれら配電のための設備を繋ぐ主な電線のことを指します。いわゆるケーブルで繋ぐのですが、屋内はケーブルラックに沿わせる形で、屋外は一般的には水の浸入を防ぐために鋼管のなかにケーブルを通す形を取ります。
日本の場合、一般的な電化製品を使用する際の電圧は100Vですが、機械単体で100Vの電圧では賄いきれないものもあります。容量の小さい家庭用エアコンは100Vというのもあるかもしれませんが、少し大きくなると200Vくらいの電圧は必要になってきます。ということで、2種類の電圧を使い分けているようですが、オフィスビルについては「動力」と呼んでいる部分、エレベーターや空調、給水用の増圧ポンプなどパワーが必要な機器を動かす際に200Vの電力を使っています。実際にモノを動かすような力ということで、「動力」と呼んでいるのでしょうか。
ところで日本のように家庭用電源として200Vと100Vを併用している国はどちらかと言えばマイナーな方で、大半の国々は200V〜240Vの電圧を1種類使っています。どのような経緯で併用するような面倒な形になったのでしょうか…。一説によると、電気の普及が始まった際に電球などの低電力の需要が多かったために、規格をきちんと定める前に100Vが定着してしまったとのことです。
ところで、ここまで書いておいておきながらの話ですが、筆者は電気設備の専門ではないのでここでの記述は意匠設計者としての知識の範疇に留まります。とは言え、意匠担当としてはこれら設備も含めて一つの建築物として統合するのが大きな役目ですし、デザイン上も様々な形で設備が影響してきます。そういう意味でこのような認識を門外漢が把握しているということ自体が建築物をまとめる上で重要なことになってきます。