5-8. コンクリート (12)

図5-8-7:サヴォア邸

図5-8-7:サヴォア邸

続いて1928年に竣工したサヴォア邸はさらに近代建築の5原則を明快な形で実現し、近代建築史において最も有名な住宅の1つとして位置づけられた作品になっています。
サヴォア邸もパリ郊外のPoissyに建てられていますが、Boulogne-sur-seineと比べてかなり遠い郊外と言って良いでしょう。小高い丘の上でかなり広い敷地に住宅がポツンと建っています。クック邸があくまでも都市型の住宅なのに対して、サヴォア邸は明らかにヴィラの系譜に位置づけられます。コルビュジェが付けている名称も[Maison Cook]と[Villa Savoy]と明確に呼び分けています。ところでヴィラというのは、古代ローマを起源とした貴族が田舎につくった邸宅のことを指します。
このような立地条件は条件が厳しい都市型の住宅に比べると、近代建築の5原則をよりピュアに表現することを可能にしました。キュービックなボリュームはクック邸のように壁を共有すること無く独立してピロティによって宙に浮かされました。1階にもエントランスやサービス部分といった建物のボリュームがありますが、それは深い緑色に塗られて背景となっている木々たちと同化し、ピロティの柱の白さが際立って浮かんで見えます。またその1階部分のボリュームは車の回転半径に合わせて弧を描いていますが、それがエッジを立てないことによって背景と同化することをより効果的に見せているわけです。

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