5-8. コンクリート (7)

図5-8-6:ロースハウス

図5-8-6:ロースハウス

このロースハウス、周辺の建物と見比べてみれば、実に装飾が少ないのがお分かりかと思います。ロースが著した本は「装飾と罪悪」というタイトルがついていますが、装飾を施すことがまさに罪悪であるかのような文章を残しています。これは当時のウィーンに溢れる、ロココ、バロック及びそれに続く歴史主義的建築の潮流に対してのアンチテーゼであったと想像がつきます。
しかし一方で、現代の私たちにしてみれば、1、2階廻りの大理石のファサードについては非常に装飾的に見えますが、ここではまず、大理石は大理石の柄が出ているだけであって決して装飾ではないという理解をするべきなのが1つ。また、ロースはギリシアやローマの古典に傾倒していたということもあり、それらの時代のファサードの構成、基壇の上に柱が並び、その上に軒蛇腹、ペディメントが乗るという建築的なあり方は決して装飾ではなくて、建築の最もプリミティブなあり方だと見ているように思えます。ロースハウスは上階の淡白な部分を除いて、大理石で出来た1、2階廻りだけ見てみても、構成は非常にシンプルでかつ古代ローマ建築を思わせる大きなスケールを感じることが出来ます。

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