5-7. 鉄 (17)
鋼材は一般的には一定の断面形状をした長い形で生産されます。断面形状によって力学的な合理性が違ってきますので、適材適所で使い分けることになります。最もよく見るものはH鋼です。この形は鋼材重量に対する剛性や強度(断面効率)が優れています。例えば、「H」という文字の水平方向に対する曲げ強度が強いので、これを90°回転させた形で、鉛直力を負担する梁として使われます。H字の縦2本部分をフランジ、間をつなぐ横1本をウェブと呼びます。また、角型や丸型の鋼管は断面を見た時に方向性が無いので、柱として使われます。それ以外にも、H型とプロポーションを変えただけのI型鋼、L字をした山形鋼、カタカナのコの字型をしているいわゆる「Cチャン」と呼ばれる溝型鋼など、必要とされる力学的特性や納まりに対して、これらの種類の鋼材を適材適所に使用しています。
上の写真は筆者が原宿で設計した鉄骨造の建物の天井を見上げたものです。小さな建物なので耐火被覆などが不要で柱、梁などの構造が顕しになっておりよく見えます。柱梁の角を繋いでいるのがブレースですが、筒状の空間となっているのでブレースが筒を横切るようには配置したくはありません。そこで写真の右手側、柱と短手梁方向は剛接合としています。柱はH型鋼がスパン短手方向とウェブの方向を合わせて、剛となる方向に強度を担保しています。一方で左手は細い丸鋼管として鉛直力だけ受け持つピンで接合しています。このように向かって左手のサッシ側にはとても繊細な柱のみを落とすことで、外観上は殆どサッシュしか見えないような極めて透明感の高い建物を実現しています。
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