4-14. 窓 (5)

開口部の最もプリミティブなあり方はやはり柱の上にまぐさが載るような形式で、それは古代ギリシアやそれ以前の建築物にも見られますが、古代ローマになるとアーチが出てきます。アーチそのものはメソポタミアや古代エジプトにも存在はしていたようですが、排水路や地下の構造体に使われていた程度で積極的には使われていないようです。建築にアーチを積極的に使い始めたのは、古代ローマ時代にイタリア中部に住んでいたエトルリア人がローマに伝え、ローマがそれを洗練させていったということがあります。
力学的にはまぐさで開口部をもたせようとするとその上部の荷重をそのまま鉛直方向に伝えるために、両サイドで柱が支える個所に大きなせん断力がかかります。そのためにまぐさ形式では幅の広い開口部は開けることは出来ませんでした。しかしアーチを用いることによって、上部の荷重をアーチに沿って両サイドの壁に鉛直方向の荷重として伝えることができます。石は引張りやせん断よりも圧縮力に対して強いですが、この時の石には圧縮力がかかる形で両サイドに力を伝えています。またどうしてもこういった場合にはアーチが外側に開くような力が働きますが、それはギリシア建築のように柱で受けるのではなくて、壁で受けることによって開く方向の力にも耐えられるように考えられていることが多いです。

図4-14-5:アーチ

図4-14-5:アーチ

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