9-4. NEWS X (1)

9. その他のこと

今回は昨年の初め頃より設計を始めまして、9月末日に無事に竣工した東京都中央区京橋2丁目に建つオフィスビル「NEWS X」について書いていきたいと思います。
南北に通る昭和通りと東西に走る鍛冶橋通りの交差点には都営地下鉄浅草線の宝町駅があります。その北西側の街区で昭和通りから入ってすぐの敷地に地上10階建て鉄骨造のオフィスビルとして竣工しました。敷地はまさに都心そのものですので、江戸時代から古地図などが残っており歴史的に敷地周辺がどのようであったかを窺い知ることができます。当時はお堀であった現在の東京駅を境に、丸の内側は皇居の手前まで大名屋敷が広がっており、八重洲側には町人の街が広がっていたようです。鍛冶橋通りの鍛冶橋はこの東京駅のお堀を渡る橋だったようですが、その名の通り町人地側には鍛冶町や畳町、南大工町など建築に関わる業種の職人町であったり、具足町、南塗師町といった工芸に関する職人の街だったことが想像できます。
昭和通りがお堀であったことは設計者として把握していましたが、実際に工事を開始して杭を打ったり、基礎をつくる段階で多くの地中埋設障害物が出てしまいました。新築の建物が建つ前の建物は、戦後の昭和中期に建てられたベタ基礎で3階建て程度の鉄骨造の建物だということは分かっていましたので、それ以前の建物で地中埋設障害物が出るとは考え難かったのですが、結果的に松杭が出ました。近接する昭和通りがお堀だったので、恐らく地盤が緩くて杭を打って建物の基礎としたか、あるいは場合によっては堀に面した場所で荷下ろしのためのデッキ状の構造体を作っていたのか。真偽は定かにはなりませんが、想像は大きく広がる、場所の時間を感じられる敷地です。

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