4-9. エントランス (3)

このようにメインエントランスはそこを出入りする人を考慮するとその建物の「顔」となるような部分で、それなりの構えをすることが殆どです。以前にも例に挙げたミースのシーグラムビルのエントランスを見てみましょう。

図4-9-1:シーグラムビルエントランス

図4-9-1:シーグラムビルエントランス

2階より上の部分では外観上、均質なグリッドが繰り返されるような意匠となっていますが、エントランスがある1階ではその外壁のカーテンウォール部分がセットバックして、構造の柱が外部に出てきています。平面図を見るとよりよく分かるでしょう。

図4-9-2:シーグラムビル平面図

図4-9-2:シーグラムビル平面図

正面ではガラスが約1/4スパン分セットバックされており、また左右でも1スパン分のガラス面がセットバックされています。また正面では唯一ファサードから飛び出している要素といっても良いでしょう、庇がエントランス部分だけは突出していて、ここがエントランスであるということを象徴しています。庇は雨を避けるであるとか、日射を抑制するという機能的な役割はもちろんあります。その目的を充足するためだけならば、恐らく正面のガラスをもっとセットバックさせて庇を付けないでもピロティ(建物のボリューム下の列柱空間)だけでもよく、計画も調節できたはずです。この建物の場合はそのようなことをせずに敢えて庇を出すことにしているのは、建物の手前にある広場とエントランスの関係を明確に位置づけたかったからでしょう。エントランス/庇/広場という直列的な関係をつくることによって、広場を含めた建物のエントランスとしての意味を強めていると言えるでしょう。

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