4-8. 階段 (13)

ここでかなり極端な例を見てみましょう。一般的には階段は階を上下移動するための部分ですが、それが全体化した例が下のマルウィヤ・ミナレットです。

図4-8-15:マルウィヤミナレット

図4-8-15:マルウィヤミナレット

イラクにあるこの塔は9世紀の中頃に建設されたそうで、ミナレットとはイスラム教の礼拝を告知するアザーンを行うために建てられています。螺旋階段が全体化したこの塔は外周部には手摺がなく内側に廻っている手摺をアテにしながら上に登って行きます。外側には手摺がありませんので、この螺旋の形態が純粋に表現されています。当然ですが、落下の危険は相当なものですね。ちなみに高さは53mあるそうです。
螺旋階段が全体化したものが以上の例でしたが、直階段が全体化したと言って良さそうなものがこのヴィラ・マラパルテです。

図4-8-16:ヴィラマラパルテ

図4-8-16:ヴィラマラパルテ

写真の通りイタリア、カプリ島の断崖絶壁の上に建つマラパルテという作家の別荘です。岬に向かって外階段が低い位置から広がりながら登っていて、それが同時に建物の屋根となっています。立地と相まってこの上ない開放感を感じます。ゴダールの『軽蔑』で撮影に使われるなど、多くのアーティストや建築家に影響を与えている作品です。

最新記事40件を表示