4-8. 階段 (7)

以前にエレベーターの稿でも書きましたが、ピアノ・ノビレは地上階の直上にありました。これは地上階のデメリットを回避した上で、最も労力を使わずにアクセス出来たからです。最も価値が低いのが階段を上るのが大変な最上階で、そこには使用人が住んでいました。19世紀にエレベーターが開発され、その重力に対する移動の労力が軽減されると、やはり地上から遠い最上階というのが最も価値のある階とされました。現代においても、眺望や周辺から隔離されているという環境を売り言葉にしていますが、実際のところやはり他人より上に自分がいるという付加価値も否めないと思います。
さて、このようにしてエレベーターの登場によって、実際の使用上も価値が下がった階段ですが、先述の通り昨今ではオフィスの場合は外部化されたり、裏に回されたりして、多くの場合はあまり積極的な価値を付与されていません。過去の例を見れば、建築全体としてより積極的な位置づけがなされている例もありますので、それらをいくつか俯瞰してみましょう。

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