9-1. 図面 (13)

日本の風土で考えれば、建築物も時間とともに建替えるものですが、西欧の社会では未だに半永久的に持続するものとしての認識の上に建築があるように思われます。(ここで詳述はしませんが、「世界遺産」のオリジナリティに対する考え方というのが好例でしょう。)とは言え、物理的に建築物というものは、当然のことながらその姿形を留めたまま永続するものではありません。人間の一生を定規にすれば永続するような見かけになりますが、実際には朽ちて風化していくものです。事実、ローマ時代の建築物はルネサンスの時代には多くは残っていなかったでしょうし、そこに残っていないからこそ憧憬を抱き、再生しようとする意思が働くのだと思います。
その場合、なにを根拠にして再生を試みるかということは、建築の場合では図面であったということです。1000年の時を経れば堅牢な石で築かれた建物も崩れてしまいますが、一方で紙の上に描かれた図面はその時を経て、紙が風化したとしても、それが伝える建築という概念は保存されていると言えるでしょう。

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