9-1. 図面 (4)

もう少し具体的な例を挙げながら話を進めたいと思います。
一般の方がもっともよく目にする図面は不動産の折り込みチラシなどの広告や家探しの時の間取り図と呼ばれるものだと思います。これはいわゆる平面図というもので、建物を水平方向に切断して上から眺めた図です。他にも建物を鉛直方向に切断した断面図や建物の外観を水平方向から投射した立面図がありますが、平面図を含めてこれらを一般的に基本図と呼びます。
図面には縮尺という概念があります。説明するまでもなく、実際のサイズである1分の1で図面を描いてしまうと、紙媒体に描ききらないので、それを適宜100分の1や50分の1に縮小して表現します。ところで図面は線で描かれるわけですが、線には太さがあります。実際にはモノのエッジには太さなんて概念はないのですが、2次元の図面に表現する際にはどうしても線の太さが視覚化する上で必要となります。現在、皆さんがいる場所を100分の1、あるいは1,000分の1の縮尺で紙の上に鉛筆で描くことを想像してください。なんの抽象化もしなければ、間違いなく紙が真っ黒になってしまうでしょう。タイルの目地や一本一本のフローリングの線、フローリングの木目を表現することは不可能です。
いずれにせよ縮尺を与えて図面に表現するということは、程度の差はあれ抽象化のプロセスは外せないということです。

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