5-3. タイル (7)

日本建築において、タイルは即ち瓦ということで、陶磁器が建材として建物の部分を覆うということは屋根しかなかったようです。1つには雨の多い日本の気候では最も効果的に水の侵入を防ぐのに効果的であった一方で、壁に使うにはうまく留める方法が無かったのかもしれないですし、あるいはほかの素材に比べて重くなってしまうので地震の多い日本には構造的に重量が増えることが有利ではないからかもしれません。
仏教伝来当初から寺院建築には瓦屋根を使うという潮流になったようですが、一方で世俗的な建築物の瓦の利用は一時、途絶えていたようです。当時は杮葺きなどの屋根よりも瓦の製作に手がかかったのでしょう。モニュメントとなる寺院のみに瓦が作られましたし、鬼瓦が製作されたのも、そのビルディングタイプとしての象徴性があってのことでしょう。
その後、室町時代には茶の湯の勃興とともに茶釜の下に敷く「敷瓦」が発展しましたが、屋根材を鍋敷きに使う茶の湯の遊び心が、その他の建築物の部位にまで広がって使われるようにはなりませんでした。

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