5-3. タイル (4)

モザイクが強力な象徴作用を見事に活かしたのは初期キリスト教における教会建築です。現在でもイタリア、ラヴェンナに残る4世紀前後の教会建築のインテリアでは、ドーム型やヴォールト型の天井は細かいモザイクによって描かれたキリストのイコンやキリストにまつわる寓話によって覆われていて、外の世界とは全く違うキリスト教の宗教的世界を見事に象徴しています。当時の人々がその教会に入って、美しい光と色の世界に身を置けば、きっとキリストの奇跡を信じることは難しいことでは無かったでしょう。

図5-3-3:ラヴェンナ

図5-3-3:ラヴェンナ

その後、時代が下って中世ゴシック、ルネッサンスなどの時代では、西欧ではモザイクを初めとするタイルによる建築の装飾はあまりみられなくなるように思います。一方で中近東では8世紀頃にイスラム教が起こり、イスラム世界ではタイルを全面的に使用した建築が多く見受けられます。(キリスト教も本来はそうだった筈ですが…、)イスラム教では偶像崇拝が厳格に行われていたために、絵画やモザイクなどで人物像を表象することはありませんでしたが、その反動かどうかは分かりませんが、タイルを全面的に使用した色彩や幾何学の表現が好まれたようです。

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