4-3. トイレ (11)

このトイレに関する原稿の前半、トイレ(3)でも書きましたが、谷崎潤一郎が『陰翳礼賛』の「厠のいろいろ」から、当時の昭和前半の日本のトイレ事情が察せます。そこで西洋式のトイレについての言及がありましたが、この時の「西洋式」という意味は、恐らく腰掛け型のいわゆる洋式ということと、白い陶器製の便器という二重の意味合いがあるように思えます。このエッセイが書かれたのは戦後すぐくらいだったように思います。
現在ではトイレ関連機器のことを衛生陶器と呼ぶほど、トイレが陶製であることは当たり前になっています。しかし、例えば時代を遡って江戸時代では排泄物を溜める容器に陶器を使っていた可能性はありますが、いわゆる便器の部分は木製でした。木製でも構わなかったのはその当時はまだ汲取式便所だったためで、水洗式になると便器に水分を流すため、木製では対応できないのは明らかです。また、衛生観念が一般に広がることを受けて、便器に陶器を使うようになっていったということがあるでしょう。

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