4-1. エレベーター (5)

エレベーターの登場は高さに対する建築の概念を変えたと言えるでしょう。通りとの関係を考えると地上階は変わりませんが、それ以上の階に関しては以前は地上との相対的な距離で価値が決まっていたのに対して、エレベーターはそれらを全て同じものにしてしまいました。「基準階」という概念が成り立つのもエレベーターがあってのことです。むしろ、価値を逆転してしまったと言っても良いかも知れません。現代の高層マンションなどは眺望の良さを売りにして、上階の方が高い値がついているので。

図4-1-4:Wainwright Building Elevator

図4-1-4:Wainwright Building Elevator

概念上は革命的なエレベーターでしたが、とはいえ一方で技術的には当初からそう簡単だったわけではありません。19世紀末に開発されたばかりの頃は、非常に遅かったそうです。この前も例に挙げたWainwright Buildingですが、現在なら1〜2機で間に合わせても良さそうな規模の建物に対して、4機のエレベーターが設置されていたのはこの速度のためです。その後、少しでも速度が改善される度にこの建物ではエレベーターを入れ換えていたそうです。建物を設計していてエレベーターの打合せをすることがありますが、現在でもメーカーさんが非常に速度にこだわっているのはそういう履歴があったためでしょうか。

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