2-2. オフィスのルーツ・西洋編 (10)
そして聖ジェロムの2枚の絵やJean Miélotの絵に共通しているのが、なぜか本が散乱しているということです。これは当時の実際の状態というよりも、美術史では様々な角度から本を描いて技巧を見せるためだとか、画面に動きを出すという風な説明がよくされます。もちろん絵なので当時の状況を正確に描いているとは言えないでしょうが、一方でこのように描かれているということは、多かれ少なかれこのような状態であったという理解も出来ます。つまり設えとしての棚は十分に用意されているものの、意外とそこに納まる本はそれほど多くなかったのでしょう。また2-2-6の絵でみられるように、空いたスペースにはフラスコや分度器の様な雑多なものが納められていたようです。
これまでルネサンス時代までのオフィスをみてきましたが、建築的な室内の特徴としては「設えられた棚」というものがオフィスを象徴するもので、あとは家具がオフィスの機能を充足していたと見受けられます。このような建築としてのニュートラルな室内というのは、現代のオフィス空間にも続いているように思われます。次回以降は近代のオフィス空間を検証したいと思います。
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