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オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え④

2.外観

ビル外観の重要なポイントは「第一印象」です。どんなテナント様からも好印象をもたれる普遍性が選ばれるオフィスビルの条件です。所要時間のように明確な数値で表せないので比較は難しいのですが、自分がオフィスビルを借りることを想定して見ていきましょう。

①普遍的要素
オフィスビルは複数のテナント様が入りますから、一部の企業にだけ人気があったり極端に個性的ではふさわしくありません。服装でいえば、まじめで清潔感があるリクルートスーツのようなビルが求められます。どんなテナント様も受け入れられる普遍的要素があることがポイントなのです。
②雰囲気
雑然とした雰囲気がないかもチェックします。いかがわしい会社や反社会的組織の入居、あるいは飲食店などの店舗を入れることでビル全体の雰囲気が悪くなっているケースも多いのです。店舗の入っていない純粋オフィスビルは、ビジネスを展開していく上では、対外的信用という意味でもプラス評価です。

3.エントランス

エントランスも入ったときの第一印象が大事です。オフィスの顔であるエントランスの印象が悪いと、テナントは決まりません。

①広さ
明るく開放的なエントランスであることが理想。天井が低く薄暗く、狭いのはマイナスです。一般的にオフィスビルは貸室部分を優先する傾向にありますが、テナント様の立場で見回してみましょう。
②清潔感
すっきりとしていて清潔感があることが大切です。メールボックスからチラシなどがはみだして床に落ちていないか、電球が切れかけていないかなど清掃や管理が行き届いているかチェックします。
③メンテナンスが容易な設計
個性が強くデコラティブなデザインは、手入れがしにくい面があります。また、異素材を組み合わせた床なども手入れに時間と手間がかかりマイナスです。設計とメンテナンスと劣化は密接に関係しています。手入れがしやすいシンプルな設計かどうかもポイントです。

2-3. 近代/ビルディングタイプ (2)

そういう意味で物販をする店舗ということだけでは「ビルディング・タイプ」として位置づけるにはいささか茫漠とし過ぎています。店舗というだけでは空間的には殆ど型を見いだせないからです。ただ、例えば郊外のコンビニを想像してみて下さい。そうすると大雑把にみなさん同じ光景を想像するかと思います。通りに面して駐車場や駐輪場があり、平屋の四角い建物が通りからはセットバックして建っている。ガラス張りの店舗は外から内側がよく見えて、フラットな屋根の軒先にはお店の看板がある。このようなある種の型に嵌まったものは郊外型のコンビニというある種の「ビルディング・タイプ」を示していると言えます。

図2-3-1:コンビニ

図2-3-1:コンビニ

また映画館という「ビルディング・タイプ」を考えれば、スクリーンに向かって多くの席が並んでおり、暗転するために閉じられた大空間がある。背後には映写室があり、ロビーが付随しており、券売の窓口がある。といったように、室(スペース)の構成(組合せ)が型に嵌まっていることが理解できるかと思います。

2-3. 近代/ビルディングタイプ (1)

これまでは近世までのオフィスを通覧してきましたが、これからは近代のオフィスビルについて書いていきます。
それに先立ってビルディング・タイプという概念を紹介します。建築設計を専門にしている人にとっては聞き慣れた言葉ですが、一般的にはあまり使われないかと思います。以前に10+1という建築雑誌で特集された際には「使用目的から見た建築の類型をさす」という短い説明がされていますが、「用途」との関係から考えてみれば分かり易くなると思います。例えば事務所というのは「用途」です。そこにいる人がその場所で何をするかによって「用途」は定義されます。物販をするのであれば店舗になりますし、映画を観るのであれば映画館です。「用途」には建物は必要ありません。屋台で物販をしても店舗ですし、屋外シアターにしても映画館となります。「ビルディング・タイプ」は日本語にすれば「建物の型」です。私たちが「ビルディング・タイプ」という時には、「用途」を伴ったある種の建築の形式を指しています。

2-2. オフィスのルーツ・西洋編 (10)

そして聖ジェロムの2枚の絵やJean Miélotの絵に共通しているのが、なぜか本が散乱しているということです。これは当時の実際の状態というよりも、美術史では様々な角度から本を描いて技巧を見せるためだとか、画面に動きを出すという風な説明がよくされます。もちろん絵なので当時の状況を正確に描いているとは言えないでしょうが、一方でこのように描かれているということは、多かれ少なかれこのような状態であったという理解も出来ます。つまり設えとしての棚は十分に用意されているものの、意外とそこに納まる本はそれほど多くなかったのでしょう。また2-2-6の絵でみられるように、空いたスペースにはフラスコや分度器の様な雑多なものが納められていたようです。
これまでルネサンス時代までのオフィスをみてきましたが、建築的な室内の特徴としては「設えられた棚」というものがオフィスを象徴するもので、あとは家具がオフィスの機能を充足していたと見受けられます。このような建築としてのニュートラルな室内というのは、現代のオフィス空間にも続いているように思われます。次回以降は近代のオフィス空間を検証したいと思います。

2-2. オフィスのルーツ・西洋編 (9)

さてここでようやくルネサンスのオフィスの室内風景に戻ります。
先にみた聖ジェロムの2枚の絵に共通しているのは、壁一面が棚に覆われているということです。現代的な感覚では家具が建物に設えられているということはごく一般的なことですが、当時の家具の位置づけを考えるとこれは一考に値します。というのは、家具というのは建築から独立するものであり、例えば時代は違いますがフランスのブルボン王朝では季節毎にパリのチュイリュリー宮からベルサイユやフォンテーヌブローに移動する際には、家具も一緒に移動するモノでした。当時の建築を見てみると建物に設えられるモノと言えば、アルコーブ状に壁に穿たれた寝台や暖炉(暖炉は建物に設えられざるを得ないですし。)程度のものでした。壁は開口部以外は壁紙やタピスリーで装飾されていました。その事実を顧みると、先の2枚の絵にみられる「壁に設えられた棚」は機能的にもイコンとしても、空間としての「オフィス」を示すものだったと言えるでしょう。