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オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑤

4.共用部分(含オフィス)

この項目はエレベーターからオフィスまで範囲が広くなっています。特に共用部分はビルによって差が出やすい部分です。オーナーの考え方が色濃く反映される部分といえるでしょう。廊下からトイレや給湯室が見えてしまっていないかなど、基本的な配慮はもちろん、使い勝手の良さなどを含めてしっかりチェックしていきましょう。

①エレベーター
サイズ、スピード、明るさ、管理状態がポイントです。ビルの規模に対して適切な設備であるかを確認します。さらに、汚れやすい床部分がきちんと清掃管理されているか、内部はもちろん扉や天井にキズや落書きなどないか、隅々までチェックしましょう。不特定多数の人が利用するエレベーターですから常に清潔で快適であることが大切です。
②エレベーターホール、廊下
各階のエレベーターホール、廊下も広さ、明るさ、清掃状況などをチェックします。オフィスに入る直前のスペースが狭く、暗いのはマイナスです。
③トイレ、洗面所
古さが出やすいトイレは清掃が行き届いているかが1番のポイントです。薄暗く、汚い印象のトイレは論外でしょう。男女兼用のトイレも印象がよくありません。また、最新機能設備の導入の有無、ゆったりとした空間設計で使い勝手に配慮されているかなども見ていきます。
④給湯室
日々の業務の円滑な進行に欠かせない給湯室は、明るく清潔で使い勝手のよさが求められます。照明、水栓の機能、十分な収納など、快適に作業ができる空間かどうかをチェックしましょう。
⑤オフィス
オフィス内部は多様なテナント様に対応できる使いやすさがポイントになります。OA機器の配線がしやすい二重床や無柱設計などは、開放的なフロア空間を生み出し、自由なレイアウトを可能にするのでプラス。また、出入り口が複数あれば来客用、社員用と分けられ、さらに1室を仕切って使用するなど、テナント様のご要望にフレキシブルに対応ができるので好評価となります。

オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え④

2.外観

ビル外観の重要なポイントは「第一印象」です。どんなテナント様からも好印象をもたれる普遍性が選ばれるオフィスビルの条件です。所要時間のように明確な数値で表せないので比較は難しいのですが、自分がオフィスビルを借りることを想定して見ていきましょう。

①普遍的要素
オフィスビルは複数のテナント様が入りますから、一部の企業にだけ人気があったり極端に個性的ではふさわしくありません。服装でいえば、まじめで清潔感があるリクルートスーツのようなビルが求められます。どんなテナント様も受け入れられる普遍的要素があることがポイントなのです。
②雰囲気
雑然とした雰囲気がないかもチェックします。いかがわしい会社や反社会的組織の入居、あるいは飲食店などの店舗を入れることでビル全体の雰囲気が悪くなっているケースも多いのです。店舗の入っていない純粋オフィスビルは、ビジネスを展開していく上では、対外的信用という意味でもプラス評価です。

3.エントランス

エントランスも入ったときの第一印象が大事です。オフィスの顔であるエントランスの印象が悪いと、テナントは決まりません。

①広さ
明るく開放的なエントランスであることが理想。天井が低く薄暗く、狭いのはマイナスです。一般的にオフィスビルは貸室部分を優先する傾向にありますが、テナント様の立場で見回してみましょう。
②清潔感
すっきりとしていて清潔感があることが大切です。メールボックスからチラシなどがはみだして床に落ちていないか、電球が切れかけていないかなど清掃や管理が行き届いているかチェックします。
③メンテナンスが容易な設計
個性が強くデコラティブなデザインは、手入れがしにくい面があります。また、異素材を組み合わせた床なども手入れに時間と手間がかかりマイナスです。設計とメンテナンスと劣化は密接に関係しています。手入れがしやすいシンプルな設計かどうかもポイントです。

2-3. 近代/ビルディングタイプ (2)

そういう意味で物販をする店舗ということだけでは「ビルディング・タイプ」として位置づけるにはいささか茫漠とし過ぎています。店舗というだけでは空間的には殆ど型を見いだせないからです。ただ、例えば郊外のコンビニを想像してみて下さい。そうすると大雑把にみなさん同じ光景を想像するかと思います。通りに面して駐車場や駐輪場があり、平屋の四角い建物が通りからはセットバックして建っている。ガラス張りの店舗は外から内側がよく見えて、フラットな屋根の軒先にはお店の看板がある。このようなある種の型に嵌まったものは郊外型のコンビニというある種の「ビルディング・タイプ」を示していると言えます。

図2-3-1:コンビニ

図2-3-1:コンビニ

また映画館という「ビルディング・タイプ」を考えれば、スクリーンに向かって多くの席が並んでおり、暗転するために閉じられた大空間がある。背後には映写室があり、ロビーが付随しており、券売の窓口がある。といったように、室(スペース)の構成(組合せ)が型に嵌まっていることが理解できるかと思います。

2-3. 近代/ビルディングタイプ (1)

これまでは近世までのオフィスを通覧してきましたが、これからは近代のオフィスビルについて書いていきます。
それに先立ってビルディング・タイプという概念を紹介します。建築設計を専門にしている人にとっては聞き慣れた言葉ですが、一般的にはあまり使われないかと思います。以前に10+1という建築雑誌で特集された際には「使用目的から見た建築の類型をさす」という短い説明がされていますが、「用途」との関係から考えてみれば分かり易くなると思います。例えば事務所というのは「用途」です。そこにいる人がその場所で何をするかによって「用途」は定義されます。物販をするのであれば店舗になりますし、映画を観るのであれば映画館です。「用途」には建物は必要ありません。屋台で物販をしても店舗ですし、屋外シアターにしても映画館となります。「ビルディング・タイプ」は日本語にすれば「建物の型」です。私たちが「ビルディング・タイプ」という時には、「用途」を伴ったある種の建築の形式を指しています。

2-2. オフィスのルーツ・西洋編 (10)

そして聖ジェロムの2枚の絵やJean Miélotの絵に共通しているのが、なぜか本が散乱しているということです。これは当時の実際の状態というよりも、美術史では様々な角度から本を描いて技巧を見せるためだとか、画面に動きを出すという風な説明がよくされます。もちろん絵なので当時の状況を正確に描いているとは言えないでしょうが、一方でこのように描かれているということは、多かれ少なかれこのような状態であったという理解も出来ます。つまり設えとしての棚は十分に用意されているものの、意外とそこに納まる本はそれほど多くなかったのでしょう。また2-2-6の絵でみられるように、空いたスペースにはフラスコや分度器の様な雑多なものが納められていたようです。
これまでルネサンス時代までのオフィスをみてきましたが、建築的な室内の特徴としては「設えられた棚」というものがオフィスを象徴するもので、あとは家具がオフィスの機能を充足していたと見受けられます。このような建築としてのニュートラルな室内というのは、現代のオフィス空間にも続いているように思われます。次回以降は近代のオフィス空間を検証したいと思います。