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2-3. 近代/ビルディングタイプ (6)

絵画史などと同じように、建築史において時間と場所の流れを追って、様式の流れをみることは1つの前提です。西洋建築史の場合、エジプトやギリシアに始まり、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロック、ロココという一連の流れです。ところがこの流れは18世紀末で滞ります。19世紀に入ると歴史主義と呼ばれるネオ・クラシシズム(新しい・古典主義)やネオ・ゴシックといった様々な様式が入り乱れる時代となります。先に述べたように、産業革命やフランス革命といった政治体制の変化など、18世紀末の社会の変革は建築にも近代化する必要を迫りましたが、この時は路頭に迷っている状態と言えます。建築史においては度々、暗黒の時代として語られます。なぜそうなってしまったかと言えば、それまでの「建築」は、ビルディング・タイプでいえば宮殿であり、教会であり、貴族の邸宅だったからです。それが産業革命が起こり鉄道が走るようになれば駅舎が必要になりますし、市民のための美術館なり図書館なり、公共的な建築物が要求されたわけです。

図2-3-4:パリ市庁舎

図2-3-4:パリ市庁舎

2-3. 近代/ビルディングタイプ (5)

日本における近代は明治以降といわれていますが、西洋におけるそれは産業革命やフランス革命が1つの時代の区切りとして扱われています。(余談ですがフランスの美術史では近代[moderne]はルネサンス以降です。)そのような区切り方がされている理由は、1つには封建社会から市民社会に体制がシフトしたことです。社会の主役が市民になったことで新しい建築のビルディング・タイプが必要となってきました。
美術館を例えにすると、長い間王侯貴族は美術品を収集し、一部上流階級の人たちの間のみでそれらを鑑賞できれば良かったものが、フランス革命以降を啓蒙思想の広まりもあり、市民も平等にそれら美術品を鑑賞できるような要求が出てきました。その要求に応える形でかつて宮殿として使われていたルーブル宮は、美術館として利用されることになりました。元々、宮殿として使われていたものですから、当然個室が並列的に繋がっていくような空間構成となっています。現在も美術館の典型と言えば、展示室が一方通行の動線に沿って並ぶものですが、それは元来は宮殿を再利用して美術館と言うビルディング・タイプが成立したという名残と言えましょう。

2-3. 近代/ビルディングタイプ (4)

2-1、2-2で近世までのオフィスについて記事を書きました。そこで資料として挙げていたのは主に絵画で、かつインテリアとしての空間についてでした。というのは、それまでは現代にみられる様なオフィスビルというビルディング・タイプは成立していなくて、オフィスというのは建物の一部を占める部屋だったからです。つまり宮殿なり城、商店なり、その他のビルディング・タイプの一部として存在していたものであって、主としてオフィスが建物全体を占める様な建築の型は存在していなかったと言えます。これは一般的な建築史を振り返ってもそうですし、例えばみなさんがヨーロッパに旅行に行って、見学に訪れる建物を思い返してみれば分かるかと思います。日本と比べるとヨーロッパには近代以前の建物が多く残っていますが、パリで考えればノートルダム寺院などの宗教建築やルーブル美術館、ベルサイユ宮殿など、元々は王侯貴族の建物ばかりです。(宮殿は貴族の生活の場であると同時に、執務の場であり、社交の場でもある多様な用途を包含したビルディング・タイプでした。)

図2-3-3:ルーブル美術館

図2-3-3:ルーブル美術館

2-3. 近代/ビルディングタイプ (3)

このように「用途」との対応で建築の形式が限定されており、それを「ビルディング・タイプ」と呼んでいるということです。
そこで(単なる「オフィス」ではなく)オフィスビルという建物も1つのビルディング・タイプであることも察しがつくかと思います。

図2-3-2:オフィスビル基準階

図2-3-2:オフィスビル基準階

現代のオフィスビルの形式を記述するならば、1階とその他の階(基準階と呼ばれる)に分けられ、基準階は執務空間である事務室とその他サービス・スペースに分けられる。サービス・スペースにはトイレ、給湯などの水廻りがあり、エレベーターやエレベーター・ホールがあります。平面の大きなオフィスビルだと休憩室や更衣室などもあるでしょう。それが基準階ではシンプルに積み上げられているのが一般的です。1階にも事務室があることもありますが、それとは別に建物としてのエントランスホールがあり、管理人室や郵便受け、受付があったりもします。これがオフィスビルの典型でしょうが、このような典型が出来てきた背景を近代に探ってみます。

オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑥

5.セキュリティ

セキュリティへのニーズは、どの業界においても年々高まっています。これにはふたつの面があり、ひとつは安全に業務を行うための防犯。過去には爆破、放火といった事件もあり、不審者をブロックすることはビルの基本性能といえるでしょう。もうひとつが情報流出に対するセキュリティです。IT関連企業の増加に加え、個人情報保護法など一般企業でも顧客情報管理に慎重さが求められるようになった影響があります。

①セキュリティの方法
セキュリティの方法は新しいほど防犯性能が高く、テナント様も安心します。自分のビルのセキュリティがいつ導入されたものか、最新のものに比べてどれくらい古いのかを把握する必要があります。
②入居テナント
反社会的勢力や風俗店、印象の悪い飲食店などマイナスイメージのテナントが入居しているかどうか、テナント構成についても再確認しましょう。入居審査もセキュリティと無関係ではありません。不安を与えるようでは安全なオフィスビルとはいえないでしょう。

6.調整

ここまで5項目の評価をしてきました。実は、全体にバランスよく高得点というビルはそうそうあるわけではありません。どこかにどうしても、平均よりマイナスになる項目があるはずです。最後の項目「調整」は、このマイナス部分をプラスにできる要素を探る作業です。

①バランス確認
まず、評価結果を五角形の図にしてみます。ここで、自分のビルの弱点を確認します。
②マイナスをプラスへ
たとえ弱点の部分があっても運営の見直しやリフォームなどで、改善できるのであればプラス評価。立地のように動かし難い条件でも、それを上回る要素を作ることを考えればいいのです。テナント様がオフィスビルを選ぶ基準は好みではなく総合点です。全体のバランスがよいビルを目指して、調整の余地があるかどうかが「調整」評価のポイントになります。

さて、総合評価はいかがでしたでしょうか。以上をふまえて、次回からは、競合他社と自分のビルとの比較の作業になります。