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8-1. 高さ制限 (4)

もう一方の隣地斜線については、道路のように高さの算定の基準となる道路幅員はありません。直接、隣地に接しているので用途地域によってある程度、一律に決まっています。第一種、第二種低層住居専用地域については前述の絶対高さが定められているので隣地斜線の設定はありませんが、その他の住居系地域で敷地境界線上、地上20mの高さから1:1.25の割合で斜線を引きます。その他、商業系、工業系の用途地域では32mの高さから1:2.5の割合で斜線を引く、といった具合です。道路斜線と同様に建物が隣地境界からセットバックした分は、隣地側にラインをセットバックしてそこから同じように立ち上げます。
また北側斜線は建物の真北方向を基準に斜線を引きます。隣地の日当りを考慮したものなので、住居系地域では適用されますが、商業、工業系の地域では適用されません。第一種、第二種低層住居専用地域で5mの立ち上がりから、1:1.25の割合、第一種、第二種中高層住居専用地域で10mの立ち上がりから、1:1.25の割合の斜線を引くことになります。

8-1. 高さ制限 (3)

建物の敷地は道路、または隣地のみに面しています。「斜線制限」には種類が3つあって、それぞれ「道路斜線」、「隣地斜線」、それに方位に関する「北側斜線」です。高さ制限の基本的な考え方は、環境として周りの土地に日当り、通風や風景といった意味で迷惑をかけないという事です。敷地の奥に行けばいくほど周囲の敷地から離れるので影響も少なくなり、その分は高く建てても良いが、敷地境界に近い位置にはある一定の高さの制限をかけましょう、ということが斜線制限です。
「道路斜線」についてはその敷地が面している道路の幅員に因るので、道路の反対側の地上レベルから1:1.25あるいは1.5の割合で斜線を引きます。その斜線を超えることなく建物を設計すればクリアです。1:1.5の斜線の地域で4mの道路に接していれば、道路境界上では6mの高さまで建てられることになります。また、セットバックによる斜線制限の緩和ということがあります。建物を道路境界から離したとすれば、道路の反対側にも同じ距離を取ってから斜線を引くというものです。先ほどの条件で、建物を道路境界より1m離したとすると、道路の反対側にも1m離すことになるので、全体の距離が6mになります。つまり道路境界から1m離した地点では6×1.5=9mの高さが建てられるということです。

8-1. 高さ制限 (2)

前述の通り、高さの制限はその建物の建つ地域によって違いますが、それらは都市計画的な視点から位置づけられています。その代表例は「用途地域」と呼ばれるもので、住宅地ならば第一種住居専用地域、中高層住居専用地域、商業地ならば近隣商業地域、また工業地域など12種類の用途地域が定められています。高さの制限はそれぞれの用途地域に適応したものとなっています。
高さ制限は大きく「絶対高さ制限」と「斜線制限」、「高度地区」による高さの制限(高度地区は各自治体がそのエリアを定める)、あるいは「日影規制」があります。絶対高さ制限については、地面(正確な言い方をすれば、平均地盤面)から何mの高さまで建てて良い、といったような単純な制限で、例えば第一種住居専用地域ならば10m、あるいは12mまでなら建てても良いですよ、ということになります。この地域だと3階建て、あるいは4階建てまでは建てられる、ということが1つの目安として分かります。

8-1. 高さ制限 (1)

8. オフィスビルの法律

オフィスビルに限ったことではありませんが、建築物を建てる時には様々な法令、規則を遵守する必要があります。その最もベースとなる法律は建築基準法、及び施行令です。それ以外にも、建築士法や都市計画法、建設業法、景観法、バリアフリー新法など多岐にわたります。また、各自治体で定めている条例や基準法を運用するにあたり国土交通省が出している法律解釈にあたる告示など細かい決まりが多岐に渡ります。当然のことなのですが、設計者は建物を法令に準拠したかたちで設計するわけですが、そこがなかなか大変なポイントでもあります。本稿ではあまり一般の方には馴染みのないであろう、これら建築関連法などをご紹介する事で、なぜ世の中に存在する建物があのようになっているのか、ということを理解するきっかけになればと思います。
まずは高さ制限についてです。建築基準法には建物の高さを制限する条項があります。戸建ての住宅地にいきなり超高層マンションが建つと日照やビル風を考えると住環境の質が担保できなくなります。このような事が無いように地域によって建物の高さをコントロールする規則が高さ制限です。

6-2. 椅子 (10)

グレーチェアは身体性というものを発展させて、人間工学という視点からデザインしているという意味では椅子の系譜を継承しているデザインと考えても良さそうです。その後、座や肘掛けが上下する機構やバネで背のショックを吸収したりと、人間の身体に合わせた様々な改良がなされています。その1つの頂点とも言える椅子がアーロンチェアです。

図6-2-21:アーロンチェア

図6-2-21:アーロンチェア

1994年にハーマン・ミラー社から発売されたアーロンチェアは、使用者に合わせて細かくカスタマイズが出来るのが特徴で、一般的な99%の人が快適に使用出来るとのことです。ペリクルと呼ばれるメッシュ素材が座と背に使用されていたり、人間工学的に骨盤を支持して長時間座っていても疲れないように設計されているということです。事務用の椅子とはいえ1脚10万円以上もする高価なものであるということもあり、どちらかと言えば一般の事務員よりも会社の上層部の人に利用されているイメージが強く、テレビドラマや映画などでも時折その様なかたちで登場します。つまり、身体性から人間工学を追求してきた椅子であるとはいえ、社会で消費される際には常に椅子につきまとうある種の権威の象徴性は現代社会においても抜けきれていないということだと思います。