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オフィスビル経営の基本Ⅱ 経営者としての心構え⑫

2.物件広告等で入手可能な情報を記入する

募集条件比較表の項目の説明に入ります。表の書き込みを始める前に選定した競合物件にNo.を付けて地図に落とし込みましょう。できれば航空地図がよいでしょう。こうすると同じような条件のビルを立地で順位を決める場合に便利ですし、20物件以上のビルの位置が分からなくなることもありません。準備が整ったら記入です。これらは個人のオーナーでも物件広告などから入手可能な情報です。

①順位
オフィスビル経営の基本Ⅱ経営者としての心構え②でご紹介した物件評価書に基づき、順位をつけます。順位は実際の情報の記入過程で変わってくることもあり、決めつけは禁物です。自分のビルを含めて冷静な判断で記入して、最終的な調整も必要です。
②物件名
同エリアに複数のビルを所有しているオーナーは、空室が多いと賃料設定を下げる可能性が高い傾向にあります。「○○第1ビル」とか「田町△△ビル」のように、物件名から同一オーナーかどうかを判断できる場合があります。
③所要時間
途中の道路事情によっては広告記載の時間よりもかかる場合がありますので、最寄り駅から実際に歩いた要時間を記入します。ビル周辺の状況など、見たからこそ分かる情報を入れておくとなお良いでしょう。
④物件広告の情報
オフィスの階数、面積(坪)、竣工年月日、入居可能日、保証金、賃料、管理費、更新料、償却費は物件広告から転載します。OA床や空調の有無、警備体制などの設備についても記載されているものは同様に転載しますが、設備は貸す側にとってマイナス情報は記載されていませんから個別に確認する必要があります。1981年6月1日改正の建築基準法施行令に基づく新耐震基準に適応のビルかどうかもポイントです。微妙な時期の竣工日であれば、建築確認申請日を問い合わせるなど確認が必要です。

8-1. 高さ制限 (10)

総合設計制度以外にもう1つ高さ制限の緩和を受けられるのが、「地区計画」がある場合です。東京の23区内の場合、各区が地域の実情に合わせて、新築の建物に一定の処置を施せば容積率や高さ制限を緩和しますよ、というものです。
例えば中央区の場合、日本橋や銀座、月島などそれぞれ地域性の強い都市空間が形成されていることもあり、それの保持、あるいは改良を目的としてそれぞれの地区計画が設定されています。
例えば銀座の場合きれいな街並がそのエリアの大きな売りとなっています。そこに斜線制限に準じて上にいくほど段々にセットバックしてしまっては街並が壊されてしまうので、前面道路から建物をセットバックさせれば、高さ制限を緩和して、かつ容積率も増加しても良い、という地区計画が設定されています。また、月島の場合は古くからの路地がありますが、都市防災の観点からみれば狭い道に面した木造の家屋は弱点です。この場合は耐火建築物への建替えを促進し、道を広げるように建物をセットバックすることが防災に繋がるために、耐火建築物とセットバックを行えば斜線や容積率の緩和が受けられるという制度設計になっています。

8-1. 高さ制限 (9)

ここまで数種類の高さ制限について述べて来ましたが、感の良い方ならお気づきかも知れません、これら高さ制限に当てはまらない建物があるということを。例えば、六本木ヒルズや西新宿の超高層ビル群、あれらは普通に高さ制限をかけると成立しない高さを誇っていますが、現に建っています。これらの高さ制限を回避する幾つかの方法があります。
その1つは「総合設計制度」です。500m2以上という比較的大きな敷地に対して敷地いっぱいに建物を建てるのではなく、建物の足元に公開空地と呼ばれる一般の方が立ち入れる場所を整備することで、道路斜線や隣地斜線を緩和、つまり無くしても良い、という精度です。さらに容積率も上乗せすることが可能なので、開発側の事業としてメリットは大きいですし、一般市民も地上レベルの歩行空間が拡大するので、環境的に良くなるだろうと考えられています。
また、東京都の場合では都心の夜間人口の減少(ドーナツ化現象)への対応策として、総合設計制度で一定の割合以上を住宅とすると、さらに容積率を増加出来るという内容もあります。六本木ヒルズやミッドタウンなど大型の開発に併せて住宅棟がつくられているのはそのためなのです。

8-1. 高さ制限 (8)

「高度地区」の制限の内容をみてみるとかなり「斜線制限」に似通った内容となっています。「高度利用地区」という土地の高度利用を目的とした内容もありますが、主たる内容はほぼ「斜線制限」と変わりがないでしょう。

図8-1-2:高度地区(渋谷区)

図8-1-2:高度地区(渋谷区)

「高度地区」は都市計画法第8条によって定められていますが、この第8条ではその他、都市計画にまつわる地域地区についても位置づけています。本稿で度々言及している住居地域や商業地域といった「用途地域」もその地域地区の1つですし、景観地区、風致地区、防火地域と準防火地域なども、この都市計画法第8条によって定められています。
「用途地域」も都市計画法で定められてそれが「斜線制限」などに繋がっているので、「高度地区」の存在意義が分かり難いものとなっていますが、そもそも法の成り立ちとしてこれらは大きく違います。「斜線制限」はあくまでもその制限の内容は建築基準法で定められていて、その適用範囲を都市計画法に則るという話ですが、「高度地区」についてはその制限の内容が法文上では明確に謳われている訳ではなく、その対象となるエリアとともに各自治体によって定められます。そういう意味で、建築基準法で定められた画一的な制限内容から、より地域の事情を反映した制限内容にできるというメリットがあるのでしょう。

8-1. 高さ制限 (7)

図8-1-1:日影モデル

図8-1-1:日影モデル

このように単純なキューブ状の建物だと割と単純に影の形を追えますが、建物の形が複雑な場合や敷地の形状が不整形の場合、複数の用途地域にまたがっていて日影の条件が異なる場合など、現実の敷地ではかなり複雑な状況があります。その場合はトライ・アンド・エラーで検証しては、ダメならば建物を修正して再度検証、という作業を繰り返す必要があります。ただ、現在では「逆日影」という、日影規制に関して敷地の条件からどのような建物を建てることが可能なのか、というCADのプログラムがあり、それを援用することで複雑な敷地に対しても予めどの程度の建物が建てられるのかという予測が出来るようにはなっています。

さて、高さに関する制限の残り1つは「高度地区」と呼ばれるものです。今まで述べた規制が基本的には建築基準法に基づいた規制でしたが、「高度地区」は主に都市計画法に基づいて定められたものです。