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5-3. タイル (1)

5. オフィスビルの素材

現代のオフィスビルではタイルと呼ばれる素材は割合色々な場所で使われています。トイレなどの水廻りに使われるのはもちろん、外装に使われることもあります。また、エントランス空間で床や壁に大判のタイルが使われたり、共用部にPタイル、執務空間にタイルカーペットが床に敷かれたりします。一般的にはタイルと言えば、陶磁器質の薄っぺらい素材をタイルとして連想しますが、上述のように実は様々な素材に対してタイルという呼称が付いています。
そもそも英語でいうタイル[tile]というのは、フランス語の[tuile]から伝わった言葉で、元を辿ればラテン語の[tegula]という言葉とのことです。その元々の意味は「焼成粘土によって覆われた屋根」という意味で、それが転じて現在では、様々な形の薄いモノが規則的に表面を覆っている時にそのモノを広義に「タイル」と呼んでいます。つまりいわゆる陶磁器質の素材という意味でのタイルは狭義のタイルであって、広義には素材の縛りはありません。そういう意味でPタイル(=プラスチックタイル)やタイルカーペットという呼称が成立します。

5-2. 石 (9)

最後になりましたが、建築用の石材として最も初めに思いつくのはきっと大理石だと思います。大理石もその成分から石灰岩の部類として類別されるようですが、ライムストーンのような凝灰岩としてではなくて、変成岩のうちの石灰岩と考えて良さそうです。石灰岩がマグマの熱によって変成作用を起こし結晶化したものが大理石である、とのことです。
日本語の大理石という名称は10〜13世紀あたりにチベットあたりにあった大理国に由来し、そこで大理石が多く産出されたからといいます。とはいえ、現在では日本での大理石の生産は多くありませんが、一昔前は日本各地、特に山口県でも大理石を産出していました。
欧米語では大理石はだいたい「マーブル」といった呼ばれ方をしますが、これはトルコにあるマルマラ海から由来しているとのことです。現在では高級建材として珍重されている大理石ですが、西欧の観光地となっている様な古くて著名な建築物の多く(例えばギリシアのパルテノン神殿やローマの遺跡群など)は大理石が全面的に使用されています。イタリアやギリシアなどは火山が多いことを考えてみると、石灰岩が変成作用を受けて生成するということで大理石が多く産出するのだろうと想像出来ます。

図5-2-15:フォロロマーノ

図5-2-15:フォロロマーノ

5-2. 石 (8)

ついでの話ですが、フランスと言えばワインの産地です。ぶどうを育てる土壌はワインの味を決める重要なファクターで、とりわけ発泡ワインの高級品であるシャンパンはシャンパーニュ地方の土壌がなくてはならないものです。パリと同様にシャンパーニュ地方、ランスやエペルネーといったシャンパンの生産地の地盤は石灰石の岩盤で出来ています。石灰を多く含んだ土壌は非常に水はけがよく、日照などの条件とともに繊細なぶどうをつくり上げるそうです。
ランスの街の少し外れにPommeryという有名なシャンパンのメーカーの工場があります。表通りからみるときれいな芝が広がり奥に城が垣間見えます。この工場はガイドツアーをやっていて、実際のシャンパンの製造工程を見ることが出来ます。

図5-2-13:Pommery

図5-2-13:Pommery

シャンパンはこのキレイな城の真下、地下のカーブで熟成されています。先述したように地盤は石灰岩の岩盤で出来ていますが、ここもPommeryが来る前は採石場だった場所で地下には石が掘られた後の複雑な大空間が広がっています。岩盤で出来ているために十分に堅牢ですし、石灰岩なのでシャンパンを保存するための温度や湿度の条件が年中安定して整っているとのことです。ちなみに第二次世界大戦中には防空壕としても活用されたとのことです。

図5-2-14:Pommery

図5-2-14:Pommery

5-2. 石 (7)

ところでパリの場合、19世紀までに建物の殆どはライムストーンによるものですが、その大量の石はどこからもたらされたものでしょうか。エジプトのピラミッドの場合は、あの石はナイル川を伝って遠くから運ばれたようですが、一方でパリの場合は古くは地産地消をしていました。実は古代ローマ時代のパリの地下は大きな採石場で、未だにその跡地として大きな迷路が残っており、誰もその地図を描くことはできていないと言います。2004年にニュースになりましたが、アーティストの団体が地下に400人規模の映画館を作っていたことが発覚しました。その後、その団体は霧散してしまったようですが、活動していた人は500人とも1000人ともいわれ、きっと未だに地下に潜んでいることでしょう。ちなみにヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」でジャベールの追手からジャン・バルジャンが地下の下水道を伝って逃げていたのも、このパリの地下ですし、「オペラ座の怪人」がオペラ座から小舟に乗って隠れ家にクリスティンを連れて行くのもこのパリの地下です。現在では14区のカタコンプでこの地下を体験出来るほか、ビュット・ショウモン公園もパリが採石場跡地であることがよく分かる形態をしています。

図5-2-12:parc de butte chaumont

図5-2-12:parc de butte chaumont

5-2. 石 (6)

堆積岩のうち生物岩に分類される石灰岩と呼ばれるお馴染みの石があります。生物岩ということで、生物の死骸が堆積して生成される岩なのですが、一方で堆積岩のうち化学的沈殿岩と分類される化学的な物質が沈殿、堆積することによって生成される石灰岩というものもあります。生成の由来は違うものの、いずれも石灰、つまり炭酸カルシウムを主成分とすることから石灰岩としてまとめられています。但し、由来が違うことでミクロのレベルでの結晶構造は違うとのことです。
石灰岩は英語で言えばLimestone「ライムストーン」となります。ライムストーンが使われた最も有名な建造物はエジプトのピラミッドかもしれません。内部構造は他の石のようですが、あの外観のイメージはライムストーンで作られているといって良いでしょう。

図5-2-10:ピラミッド

図5-2-10:ピラミッド

ヨーロッパではライムストーンは一般的な石材で、いわゆる石の組積造の建物の殆どはライムストーンが使われていると考えて良いかと思います。薄いベージュの街並はこの石の素材の色に由来しています。

図5-2-11:オペラ通り

図5-2-11:オペラ通り