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9-1. 図面 (1)
9. その他のこと
このコラムでは「オフィスについてのあらゆること」を書くと謳っていますが、特定のジャンルにはカテゴライズして書き難いトピックもありますので、そんな内容は「その他のこと」という章を設定してまとめることにしました。その1つ目のトピックは図面についてです。
私たち、建築設計の仕事の成果物は基本的には図面であると言っても良いでしょう。もちろん建物を設計しているのでいわゆる建築家の作品というものは、建築された建物であることには間違いありません。いわゆるデザイナーやアーティストと最も違うことは、最終的な作品を自分の手で作るわけではないですし、1分の1のサイズの試作品を作れるわけではないということだと思います。
例えばルネサンス時代の画家も自分でアトリエや工房を持って、自らのスタッフに指示を出して作品を仕上げていたという意味では自分の手で作品が出来上がっているわけではありませんが、いずれにせよ最終的な出来上がりの作品に直接手を加えているわけです。自動車のデザインや小さなプロダクトのデザインも自分の手で作るわけではないですが、最終的に製品として出荷される前には数多くの原寸大の試作品で検討が出来るでしょう。一方、建築物で原寸大でサンプルをつくるなんてことは、とてつもなく贅沢なことで、まず予算がそれを許しません。
8-2. 面積 (5)
法的に緩和されている場合と違って、あえて床をつくらずに容積率として算定されないように対応を考える場合もあります。よくあるのがオフィスビルなどにおいて、階段が屋外階段になっている例です。利用の実態としては概ねエレベーターを使うことが殆どで、そういう場合には階段は外部でも構わないであろうという発想で、法的には屋外の避難階段の規定を満足していれば良いことになります。この場合はあくまでも屋外ということで、容積率には算入されません。(当然ですが、屋内の階段は算入されます。)また、天井高が1.4m未満の箇所も容積に算入されないので、あえて部分的に低い場所をつくってそこを収納にしたり、採光のための奥行きのある窓をつくったりもします。
ところでこのような容積率という考え方ですが、世界的にみてもわりと考え方は共通しているようで、ヨーロッパや中東、中国でも同じ様な制限のかけ方をしているようです。以前にニュースでみたのですが、中東のどこかの国で延床面積の規定はあったけれど高さの規定がなかったために、階高10m以上の超高層が建ってしまった、なんていう笑い話みたいなことを聞いた記憶があります。(ネット上でそのニュースをみつけられませんでしたが…。)
また、中国は地方によっても違うようですが、階高が3.6m以上の吹抜けは床面積を1/3増しで計算する、というローカルルールも聞いたことがあります。これは後から増床されることがあるので、予めそれを見込んで算入しておくというスタンスのようです。また容積率といった時に、本当に空間の気積を容積として計算するという制限のかけ方もあるようです。
8-2. 面積 (4)
一方で容積率ですが、建蔽率よりも細かくイレギュラーな例外、緩和措置があり、計算がややこしいことが多いです。そのため、都市計画上で定められる「指定容積率」という考え方と、前面道路が12m未満の場合に前面道路の幅員に0.4あるいは0.6、0.8といった数値を乗じた「基準容積率」のうち、低い方が採用されます。例えば都市計画で定められた「指定容積率」が300%の場所で、一方、前面道路が4mで0.6を乗じる「基準容積率」の時には4mx0.6×100=240%となるので、容積率としては240%という数字を採用することになります。
この計算がベースとなりますが、それ以外にも建物が住宅系の用途の場合には地下の部分(平均地盤面からの高さが1m以下の部分)は全体の1/3までは容積対象算入外になります。また、共同住宅の場合には共用廊下部分は面積から除外されたり、特定道路(幅員15m以上の道路)に接続する6〜12mの前面道路のうち、特定道路から70m以内にある場合はその距離に比例して緩和を受けることができるなどなど、その他にもいろいろと緩和、例外の規定があります。
8-2. 面積 (3)
この用途地域に建蔽率と容積率の関係が紐づいています。例えば低層住居専用地域における敷地では、許容建蔽率は30,40,50,60パーセントの中から都市計画で定める数値を採用して、許容容積率は50,60,80,100,150,200といった数字から同様に採用します。住宅地では比較的低い数字が設定されている一方で、商業地では容積率の最低値が200に対して最高値は1,300という数字が設定されていて、その幅は非常に広く、都市計画によってかなり恣意的にエリアの特徴がつくられると言えるでしょう。
建蔽率はその条件によって率の緩和を受けられます。1つ目は、当該敷地が角地である場合です。敷地が道路に角で2面、面している状態で10%の許容建蔽率が上乗せされます。ただし、敷地が道路に2面面していても、敷地の角で交わらずに、敷地の手前と奥でそれぞれ面している場合には緩和はされません。また2本の道路のうちの1本が私道の場合でも角地緩和は適用されません。(ただし基準法42条1条5項で道路位置指定を受けていた場合はこの限りではないようです。)
2つ目は、その敷地が防火地域に定められている際にその建物が耐火建築物として建てられる場合です。防火地域内の100m2以上の建物、あるいは3階建て以上の建物は耐火建築物として建てることを義務づけられていますので、防火地域で建築する場合はこの内容が適用されるのはほぼ間違いないでしょう。このときにも同様に10%の許容建蔽率が上乗せされます。
8-2. 面積 (2)
続いて「延床面積」あるいは「容積率」ですが、これは当該敷地に対して床として建物が何平方メートル建てているか、あるいはそれを割合で表現したものとなり、「許容容積率」はその割合の最高限度にあたります。この数字は敷地の資産価値を考える上で極めて重要な数字です。その敷地にどの程度の床面積が得られるかということは、その床を賃貸にする上で直接的に収入に関わってくる最たるファクターです。m2あたり坪単価といった考え方がそれを如実に示していますし、賃貸物件を探す際には予算と場所に加えて広さというのは最も基本的な項目でしょう。
これら「許容建蔽率」「許容容積率」は都市計画によって定められています。ここで、いったい都市計画では何がなされているのか?という疑問が挙がります。基本的には対象となる都市をエリア毎に分けて、そこに想定する建物の用途を当て嵌める、ということを都市計画がしています。多くの場合、幹線道路沿いは高層の建物が建てられる商業地の色をぬり、駅前にも商業地の色をぬる。表から裏に入ったところでは良好な住環境を維持するために、住宅地の色を塗るといったところです。ここでベースとなるのは「用途地域」で、[8-1:高さ制限]でも少し出てきましたが、地域を指定することによって建てられる建物の用途を限定するものです。最も単純な例を想定すれば、住宅地内に工場が建てられないようにするために用途地域をコントロールすると考えれば良いでしょう。