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4-8. 階段 (10)
階段は蹴上面と踏面の垂直面と水平面の組合せから基本的には構成されていますが、安全性などを担保するために踊り場や手摺がある場合が殆どです。日本の建築基準法上は、踊り場は高さ3mごとに設けなければなりません。万が一、階段で転げ落ちた場合でも、一旦は踊り場で受け止められるということです。手摺も言わずもがな、階段の側面から転落しないように設置されます。
蹴上面と踏面は断面方向の形状で、それ以外の形は基本的には有り得ないですが平面形状で考えると、階段はいくつかのバリエーションがあります。各階の間に1つの踊り場がありそこで折り返す形の階段が一般的でしょうが、通称鉄砲階段という平面的にはストレートなものや螺旋階段などがあります。先述のフォンテーヌブローの外階段は平面的には馬蹄形をしていました。バロック建築に度々使われた馬蹄形平面の階段は、建物のファサードの正面性、対称性をつくりとても優雅な印象です。

図4-8-11:鉄砲階段
オフィスビル経営の基本Ⅲ 経営者個人の課題と専門家の必要性③
このように、オーナー様の時間的課題、ノウハウ面での課題をクリアするために、専門家を利用する必要が出てきますが、次に「優れた専門家か否かをどのようにして見極めるのか」が問題となります。
優れた専門家の定義と見極め方総論
建築設計にせよ、リニューアルやサブリースにせよ、優れた専門家というのは業者のなかでも一握りの存在であるということをまず認識する必要があります。
そもそもビルオーナー様の目的は、当該ビルを経営することによって収益をあげることにあるはずです。相続税対策でビルを経営されているオーナー様もいらっしゃるでしょうが、その場合であってもビルから収益を上げなければならないことに変わりはありません。
そうであれば、「優れた専門家」の必要条件は、「その会社に仕事を依頼することによって収益が増加すること」であり、十分条件は「他の専門家よりも総収益額が高くなる」ことであると言ってよいでしょう。
ですから、優れた専門家か否かは、過去の実績情報を全てチェックし、関わったビルの経営が成功しているかどうかをチェックしていけば自ずと見えてくるということになります。もちろん、業務内容が建築設計なのか、リニューアルなのか、サブリースなのかによって具体的なチェックの仕方は変わってきますので、詳細は次回以降の各章にて解説していきます。
4-8. 階段 (9)
同じくフランソワ1世がロワールにつくった居城、シャンボール城にとても面白い階段があります。

図4-8-9:シャンボール城
四角い城壁が広大な庭の中にぐるりと廻っていて、4つの頂点に塔が建っています。表からアプローチして、奥の1辺に隣接するように同じく四角い本丸部分がくっついていて、そこには数多くの小さな塔が林立しているというなかなか見たことのない構成の建物です。上の写真は裏側から見たものなので、本丸と城壁が一体化してみえています。
さてその本丸部分は十字形に4つの部分に分節されているのですが、その中心にあるのがこの二重螺旋の階段です。

図4-8-10:シャンボール城の階段
二重螺旋といえばDNAの形態を説明するときによく聞きますが、階段を二重螺旋にすると1つのフロアに対して登り口が2つあるということになります。そのメリットは例えば上りと下りの使用を分けてしまえば、人とすれ違わないということがあります。当時の貴族女性の服装を想像するに、すれ違うと互いの裾があたるので、こうした配慮がなされたと考えても良いかも知れません。あるいは一方をパブリック、一方をプライベート用とすれば、公私が混同した、客の多い当時の宮廷において、僅かばかりのプライバシーの確保ができると考えても良いでしょう。
ちなみにこの階段はフランソワ1世が迎えていたレオナルド・ダ・ヴィンチがデザインしたと言われています。
4-8. 階段 (8)
先述のダヴィットの絵画、ナポレオンの戴冠の絵がありましたが、歴史上のワンシーンに階段が登場して来ることは度々見られます。

図4-8-7:Fontainebleauの階段
上の建物はパリの南東部にあるフォンテーヌブロー[Fontainebleau]の宮殿の正面の階段です。土地としては12世紀頃にはフランス国王の領地になっていて、歴代のフランス王に愛され使われ続けた宮殿です。16世紀初頭のフランソワ1世時代に現在の宮殿の骨格がつくられ、その後の歴代の王が増築や改修を重ねて現在に至っているので、ルネサンス以降のフランスの建築様式が融合しておりとてもユニークな建物になっています。中庭を囲むように建物が配置されていますが、その正面となっているのがこの写真の馬蹄形の階段が取り付いている部分です。
ナポレオンが失脚した際にフォンテーヌブローに滞在していて、ここから幽閉、島流しに遭うときに、この中庭に整列した軍の面々に対して、階段の上から「adieu a mes enfants!」(さらば、我が息子たち!)と言って階段を下りて迎えの馬車に乗って去って行くという歴史上のシーンが有名です。やはりここでも「階段を下りる」=「失脚」という関係から、階段が象徴する権威ということを考える上で興味深い歴史のワンシーンです。

図4-8-8:ナポレオン/Fontainebleauの階段
4-8. 階段 (7)
以前にエレベーターの稿でも書きましたが、ピアノ・ノビレは地上階の直上にありました。これは地上階のデメリットを回避した上で、最も労力を使わずにアクセス出来たからです。最も価値が低いのが階段を上るのが大変な最上階で、そこには使用人が住んでいました。19世紀にエレベーターが開発され、その重力に対する移動の労力が軽減されると、やはり地上から遠い最上階というのが最も価値のある階とされました。現代においても、眺望や周辺から隔離されているという環境を売り言葉にしていますが、実際のところやはり他人より上に自分がいるという付加価値も否めないと思います。
さて、このようにしてエレベーターの登場によって、実際の使用上も価値が下がった階段ですが、先述の通り昨今ではオフィスの場合は外部化されたり、裏に回されたりして、多くの場合はあまり積極的な価値を付与されていません。過去の例を見れば、建築全体としてより積極的な位置づけがなされている例もありますので、それらをいくつか俯瞰してみましょう。