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9-2. オフィスビルの付属品 (3)

最近のマンションでは宅配ボックスのような大型のものも受け取れるようになっているようですが、郵便受けしか無い場合で宅配便ではなくて郵便物が大きすぎる場合はどうなるのでしょうか。郵便物扱いのものについては、これまた郵便法に郵便物のサイズの上限が定義づけられています。
第十五条 (大きさ等の制限)  郵便物は、次に掲げる大きさ及び重量を超えることができない。
一 大きさ
長さ 六十センチメートル
長さ、幅及び厚さの合計 九十センチメートル 」
A3サイズで42cm x 30cm 程度なので、この場合は厚さ18cmまでは郵便物として送れるわけです。本来なら郵便受けはこの程度のサイズを受けとれる様な規格が想定されているべきなのでしょう。いずれにせよ一般的にはA4サイズくらいがベースとなっているデザインの郵便受けが多いように見受けられます。ちなみに郵便物が郵便受けに入らない場合は、実際にはインターフォンで呼び出しをして、もし不在の場合には不在票を残していくという対応はしてくれているようです。
ところでこれらポストは当然ですが入居している入居者ごとに1つは必要となるので、入居者が多い大規模な建物となると付属品であるはずのポストも集まることである程度のサイズとなって、もはや付属品とは言い切れないスケール感になることもあります。

図9-2-1:集合郵便受け

図9-2-1:集合郵便受け

玄関廻りにこのようなモノが出てくるため、デザイン側としては常に悩ましいポイントではあります。

9-2. オフィスビルの付属品 (2)

現代のオフィスビルにおいて郵便受けを設置していないものは一部の例外を除いてないように思えます。想定される一部の例外というのは、意外にも法律上位置づけられています。
郵便に関しては郵便法という法律で枠組みが作られています。そこには事業の独占であったり、郵便物の種類であったり、私たちが日常的に接している郵便の当たり前のことがきちんと法律で謳われています。その中の1つ第43条はこのような条文です。
第四十三条 (高層建築物に係る郵便受箱の設置)  階数が三以上であり、かつ、その全部又は一部を住宅、事務所又は事業所の用に供する建築物で総務省令で定めるものには、総務省令の定めるところにより、その建築物の出入口又はその付近に郵便受箱を設置するものとする。」
条文をパッと見ると建築基準法のようですが、要するに3階以上の建物の出入り口には郵便受けを設置しなさいということが書かれています。つまり1、2階建ての建物が郵便受けを作らなくても良い、上述で言うところの例外として想定されているわけです。これは郵便の料金制度が距離ではなく重さに因って決まっていることも同じですが、とにかく郵便局の職員が過大な労力を必要としないでも業務が遂行できるようにというところから来ています。(郵便物の1つ1つを距離に応じた料金体系にすると、いちいち送り先までの距離を算定するのが大変なので。)
法令上では他の条文については抵触すれば罰則規定も決められていますが、43条については罰則規定があるほどではありません。とはいえ、書留を除けば3階以上の階に郵便局の方が配達には来てくれなさそうなので、どうしても必要に応じるかたちで、玄関廻りには郵便受けを設置しなければならなくなります。

9-2. オフィスビルの付属品 (1)

9. その他のこと

今週の残りは「オフィスビルの付属品」について書きたいと思います。あまり細かいことはあまりオフィスビルには関係が内容にも思えますが、オフィスあるいは建物には必ずと言っていいほど避け難く付いてくるモノがあります。郵便受けはその1つですが、その他スイッチプレートやコンセントプレート、インターフォン、火災報知器などです。それぞれ床に付くもの、壁または天井に付くものなど様々ですが、これらまさに「付く」ものは付属品のようなものなので、設計時にはそれほどキチンとはデザインされないもので、工事現場の流れの中で調整して後から決まっていくことが慣習的に多いです。また、消防関連の機器の場合は認定が取れているものでなければ使用できなかったり、スイッチプレートなどは電気の規格が決まっているためにデザインの選択肢が決められています。これら付属品はデザインにとっては多くの場合は想定外の邪魔者で、どれだけ目立たないでこれらの設置を対応するかというあたりが、デザイン上の肝になることが殆どだと言っても良いでしょう。
まずはその中でも比較的デザインのコントロールがしやすい、郵便受けについて考えます。

8-3. 火災 (12)

最また避難階段は屋外に作ることが出来ますが、階段の稿でも書きましたが、屋外避難階段メリットは容積対象とならないということで、多くの中小のオフィスビルがその規定を利用して、有効に室内の面積を利用しています。その場合の構造は屋内の場合と同様に、出入口は防火設備とするといったことや、階段から2m以内の範囲の外壁には1m2以上の開口部は設けられないといったことです。また「周囲が十分に外気に開放されていること」という要件があるのですが、法文上はここまでしか書かれておらず、定義が曖昧です。実際には東京都や区といった特定行政庁が個別に判断していて、例えば階段の外周の1/2以上が外気に接していて、かつ敷地境界から50cm以上離れていること、といったことで運用されています。
また特別避難階段は、さらに構造上に安全への配慮がなされています。超高層マンションやビルなどを考えれば、階段のつくりがいかに重要かは想像に難くありません。特別避難階段の場合には屋内のみとなっていて、階段に入る手前に付室あるいはバルコニーを作ることによって、火の廻りに対してさらにワンクッション隔てるということと、付室のところで廻ってきた煙を外に出して階段室内に廻らないようにするという2点が避難階段に加える主な要件です。
ここまで長々と避難に関する規定について記述してきましたが、これらもまだ規定の一部を書いているに過ぎません。日本では歴史的にかなり火災を被ってきたわけで、それが建築基準法に反映されてきたわけです。それでも完全には火災の被害は無くならないので、未だに度々、細かな規定の変更はなされているのが現状です。

8-3. 火災 (11)

最後にこれら直通階段の種類とその構造上の定義に触れておきたいと思います。(もはや「火災」の項よりも、「4-8.階段」の項の方が適切な内容かもしれませんが…。)
被災時に階段は避難上有効である、つまり円滑に避難出来るような構造となっていなければなりません。一定以上の状況の場合、それらを普通の直通階段とは区別して、避難階段、あるいは特別避難階段と位置づけて、その階段の構造を規定しています。2直階段の場合と同様に避難階段の場合にもデパートのような物販店舗の場合に別枠で規定が定められていますが、その他の建物の場合には5階以上の階、あるいは地下2階以下に通じる直通階段は避難階段としなければならず、さらに15階階以上の階、あるいは地下3階以下の階に通じる直通階段は特別避難階段としなければなりません。
避難階段には屋内と屋外の2通りが想定されていて、屋内の場合にはその階段を耐火構造の壁で囲い、内装は下地・仕上げ共に不燃材とします。階段に出入りする扉は防火設備として、外壁に設ける開口部は90cm以上隔てなければならず、屋内に面する窓は1m2以内として網入りガラスのはめ殺しの防火設備にしなくてはいけない、などの細かな規定がなされています。普通の直通階段にはこれらの様な規定はありませんので、5階建て以上の建物の階段と4階以下のものはかなりつくりが違ってくるということになります。