新着情報
8-4. 建築関連法規 (5)
また建物の個別の条件を定めるのに関連した法規があります。
例えば、建物を建てる敷地は道路に2m以上接することが条件となっていますが、その道路というのは主に「道路法」によって位置づけられた道路のことを指します。(場合によっては、土地区画整理法や都市再開発法などによる道路ということもあります。)
あるいは「下水道法」によって定められた区域内の場合はトイレを水洗トイレにしなければならないというのも、法で定められている内容です。
また「景観法」で定められた景観地区では、建物の最高高さや壁面後退、工作物の制限などがあったり、「駐車場法」で定められた駐車場整備地区において、一定規模以上の建物や特定の用途に応じて一定数以上の駐車場の設置が定められています。
また、通称「バリアフリー新法」と呼ばれる「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」では、一定規模以上の建物や特定の用途において、車椅子で円滑に移動できるような廊下の幅であったり、使いやすいエレベーターの設置の義務づけといったことがこの法律で位置づけられています。
8-4. 建築関連法規 (4)
建築基準法でいうところの「公共の福祉の増進に資する」という点で関わるのが「都市計画法」です。こちらもまずは第一条を参照しましょう。
「第一条 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」
目的はやはり建築基準法でも謳われていた「公共の福祉の増進に寄与すること」でありますが、さらにここでは「国土の均衡ある発展」ということも言われています。この法律が制定されたのは昭和43年ですが、当時の自民党政権の政策が時代とともに象徴されている一言だと思われます。
何はともあれ、実際的な制限と手続きなどが定められており、建築基準法でも密に関わる都市計画区域や用途地域などの地区地域がこの法律で位置づけられています。第一種住居専用地域や商業地域といった用途地域のほか、高度地区、特定街区、防火地域、景観法による景観地区、風致地区、駐車場法による駐車場整備地区などが都市計画法の中で位置づけられています。
8-4. 建築関連法規 (3)
以下、建築基準法に関連する法規を追っていきたいと思います。
まずは、「建築士法」。これは建築物の設計者あるいは監理者の資格を定めるもので、その職責や免許に関する枠組みを位置づけています。そして設計に対して、建築物を建設する側の法律である「建設業法」があります。こちらも1条にその法の目的が定められています。
「第一条 この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」
この法律では建設業特有の「元請け-下請け」の産業構造を前提として、その契約関係の健全化が「適正な施工を確保」することに繋がるといった意図がみえます。「建設工事の請負契約の適正化」と書かれているのはそのことを示しています。いずれ稿を変えて詳しく書きたいと思いますが、元請けと呼ばれる発注者、建築主との契約をするゼネコンあるいは工務店は、建築の工種ごとに様々な種類の工事業者に請負契約で仕事を発注して工事を進めます。つまり実質的に建物を作るのは請負人である下請け業者なので、その「元請け-下請け」の関係の健全化が建物の品質確保のために重要であるということで法律上このような書き方がされているのでしょう。
8-4. 建築関連法規 (2)
建築基準法を補うようなものが建築基準法施行令です。基準法が法律なのにたいして、施行令は政令です。基準法上で定められた内容をより具体的に位置づけています。実際には基準法が大まかな方向性を位置づけていると考えて、それらの細則を定めています。例えば階段の蹴上げと踏面の最低寸法が定められていたり、廊下の最低の幅をその建物の用途や規模から定めるといったことです。
さらに細かいことについては、国土交通省が個別に告示というものを出しています。ここでは施行令でもカバーできていなかった実際の問題に対して新しい基準や解釈を示すということや、時代に依って変化する内容をその都度示すということもあるかと思います。例えば数年前に出された告示で、延焼の恐れのある範囲におけるアルミサッシの窓の構造についての告示が出されて、私の担当した案件で設計時ではOKだったものが、施工時には新しい告示の基準に対応するようにしたということがありました。
ということで、基本的には、建築基準法>建築基準法施行令>国土交通省告示、というヒエラルキーで法規を追っていけば、概ね取りこぼしがなくなるのかなと思います。
8-4. 建築関連法規 (1)
8. オフィスビルの法律
建築物の設計時には法律、条例、告示などかなりの数のこれら関連法規に準じて設計をする必要があります。「オフィスビルの法律」という稿を書くにあたり、もしかしたら最初に書くべきだったかもしれませんが、どのような類いの法規によって建築物が制約を受けているかということを簡単に網羅しておきたいと思います。
建築物の設計、建築にあたり、最も基本となる法律が「建築基準法」です。これまで書いている、面積に関する制限、高さに関する制限、防災に関する制限や構造、設備、室内環境に関する制限などが謳われています。その目的は第一条に書かれている通りです。
「第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」
私が思うに、ここでのポイントは基準法があくまでも「最低の基準」であり、そのことによって「(個人としての)国民の生命、健康及び財産の保護」とともに「公共の福祉」を担保するということです。自分の敷地内だからといって、何でも思い通りに建物を建てて良いわけではなく、そこに居る人々を護ることはもちろん、「公共の福祉の増進」、これは都市的な眼差しだと思います。つまりある敷地に建つ建物は都市の一部でもあるという前提で、その都市の良好な環境を確保しましょう、という目的があると考えて良いでしょう。事実、この建築基準法は都市計画区域外だと極端に制約が少なくなります。