新着情報

4-11. 駐車場 (5)

2つめはタワー型の駐車場で、街中でも単独で駐車場のタワーとして建っているのもみられます。

図4-11-4:タワーパーキング

図4-11-4:タワーパーキング

メーカーにはタワーパーキングとは違うシステムとしてエレベーターパーキングやフォークパーキングなどもあるようですが、建築の設計者としてはパーキングのシステムそのものより車のレイアウトとパーキング部分の形が建築に影響してくるので、これらは一括してタワーパーキングとして考えても良いでしょう。このタイプは上記写真のように単独のタワーとして街中で見かけるほか、超高層マンションなどでは大きな平面の中心にあえてパーキングをレイアウトして、日照を得られない空間を有効に活用しようという意図が読み取れます。
3つめは地下式パーキングと呼んでも良いでしょうか。オフィスビルに使いやすいものです。

図4-11-5:地下式パーキング

図4-11-5:地下式パーキング

乗入れ口が地上(あるいは地下の場合も)にあって、パレットに車を駐車して、人は外に出ておいて、パレットが地下の駐車場に収納されるものです。地下に入った後、駐車スペースは水平方向に展開されています。オフィスビルの場合は地下に居室をつくるのは難しいですし、高層ビルの場合はいずれにせよ杭や地中梁を大きく取らなければならないので、それらのスペースを有効に活用できます。

4-11. 駐車場 (4)

機械式駐車場は各メーカーがいくつもの商品を出していて、実際に設計する際にも正直言って、それらの差異がよく分かりずらいものですが、大雑把にカテゴライズすると3つくらいのタイプで考えても良いかなと思います。
1つはマンションなどでよく見られる多段式パーキングです。

図4-11-3:多段式パーキング

図4-11-3:多段式パーキング

普通に並ぶような青空駐車の地下や地上部に台数を増やしていくといった感じで、地上5段や地下2段地上4段などといったかなりの台数を納められるものもあるようです。地下1段地上1段や地下2段地上1段のタイプは3列なら上下に移動するだけなので、3列ならばそれぞれ6台、9台駐車できることになります。一方で例えば地上3段のものは、車の出入りはあくまでも地上部なので、3列に並べて空きスペースを作ってスライドさせながら上下させるということで、対応するようになります。つまりこの場合だと3x3の9台置けるのではなくて、その内の1列は1台を除き空きスペースとしなくてはいけないので、7台分置けることになります。

4-11. 駐車場 (3)

もう少し例を挙げて考えてみます。先に書いたように例えば、単純化した計算で1500m2の延床面積のビルに5台の駐車場が必要だったとします。あくまでも延床面積ベースの話なので、この敷地の容積率が800%だったとすると、逆算すれば敷地の面積は200m2を切るわけです。1台あたりの駐車スペースは3x5m=15m2として、先述の通り通路部分も考えれば、15m2x5台x2(通路分)=150m2となり、もはや地上部は殆ど駐車場で占められてしまいます。
このように駐車場の附置が義務づけられた場合には、現実的にはかなり厳しい数字を突きつけられることがあるわけですが、このような状況は大抵の場合には機械式駐車場を利用することによって解決することが多いです。いくつかのメーカーがいくつかのパターンで商品を販売していますが、このような機械式駐車場のラインナップが充実している国は日本だけではないでしょうか?フランスのとある超高層ビルの開発において、駐車場の確保に困った際に日本の機械式駐車場に注目していたという話を聞きます。

4-11. 駐車場 (2)

オフィスビルと駐車場というのはあまり直接的に関連するようなイメージがないかもしれません。本社ビルなどを除いて、都心のテナントビルの場合は多くの人が電車で移動するので、それほど駐車場の需要がなく、出来ればつくらない方が採算上有利だったりします。しかし、駐車場法という法律において指定された地域(駐車場整備地区)では、ある一定規模以上の建物を建てる場合に、その規模に応じた台数を設置することが義務づけられています。
例えば1500m2以上のオフィスビルについて、300m2毎に1台の駐車場の附置を求められています。つまりこの場合は5台以上の駐車場をつくらなければなりませんが、例えば下図(4-11-1)のような形で敷地内に5台の駐車場を並べることはできません。駐車場の出入口の幅が広く、その範囲で車路が歩道を跨ぐのは危険だからです。

図4-11-1:駐車場例1

図4-11-1:駐車場例1

この場合では下図(4-11-2)の様に車1台分が歩道を跨ぐ形で駐車場のレイアウトを考えることになります。

図4-11-2:駐車場例2

図4-11-2:駐車場例2

以上はあくまでも一例ですが、このように駐車場は駐車スペースと同等かそれ以上に車路に面積を取られることになり、その制約を受けながら建築の計画を進めることになります。また延床面積に応じて駐車台数が多くなるので、容積率の高い敷地の場合は更に条件が厳しいと言えるでしょう。

4-11. 駐車場 (1)

4. オフィスビルの部分

オフィスビルの設計では大部分はがらんどうの執務空間をつくり、残りはサービス部分としてコンパクトに設計します。レンタブル比という言葉がありますが、全体の面積に対して専有床面積の割合を指す言葉で、これが高いほど収益性が上がるということで経済的には優秀な設計とされるわけです。 この残りのサービス部分ですが、基準階では階段やエレベーターといった縦動線、廊下やエレベーターホールといった平面方向の動線、あるいはトイレや給湯室といった水廻り空間がそれに当たります。また、1階においては一般的にはエントランス空間があり、管理室やゴミ置場などがサービス部分として位置付けられるものです。 以上は概ね建築物内に作られる場所ですが、敷地内の屋外には自転車置場や駐車場、緑地などが計画され、それらが総じてひとつの建築としてのオフィスビルが構成されます。 これまではトピックとしていわゆる屋内の空間に注目してきましたが、今回は主に屋内外の双方に設置される可能性がある駐車場の考察をします。