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9-4. NEWS X (3)

現在は因幡町という名称はなくなっていますが、1923年の関東大震災によってこの地域一帯は全て火災によって消失してしまったために、震災復興に伴って1931年に「宝町」という町名に改称されています。その後、1978年には再び改称されて、以前から存在していた京橋という地名に統合されて現在まで続いています。ちなみに鍛冶橋通りと昭和通りの交差点にある都営浅草線宝町駅の「宝町」という名称はこの1931-1978年に存在した住所に由来しています。
また、1978年に宝町から京橋に再び改称されたのは、1962年に成立した「住居表示に関する法律」に単を発しています。不動産登記などではよく目にする「地名・地番」は旧来、一般的な住所と同じように使われていました。しかし、町界が道路と一致していなかったり、地番も整然としていなかったようで、実際にはかなり不便なこともあったようです。そこで「地名・地番」とは独立した新しい規則をベースに住所を整理しましょう、というのがこの「住居表示に関する法律」だそうです。一方で「地名・地番」についても地域によっては「地番整理」といって分かりやすいように地番を付け直している場所もあるそうです。本敷地も地名上も宝町ではなく、京橋2丁目となっているので、地番整理が行われたということが分かります。

9-4. NEWS X (2)

図9-4-1:京橋1892

図9-4-1:京橋1892

グーグルアースで現在の衛星写真の上に古地図を重ねることが出来ます。東京の場合は1680年以降いくつかの古地図があるので、その土地の履歴として場所を読み取ることができます。上図はその古地図のうちでも最も新しい1892年の敷地周辺のものです。地図の精度がまちまちなのですが、1680年以降はこの周辺は街の骨格が変わることなく、現在のグリッド上の街区のルーツがかなり古いものであることが分かります。

図9-4-2:京橋2014

図9-4-2:京橋2014

さて、古地図にはお堀に面した個所は街区を跨いで「本材木町三丁目」という表記になっています。お堀経由で運んできた材木を取り扱う材木屋が集まっていた場所なのでしょう。現在は昭和通りと首都高速に挟まれた場所です。現在の昭和通りとNEWS Xの敷地がある街区は「因幡町」という名称でした。因幡の国は現在で言えば鳥取市とその近くの群に対応し、室町時代以降は長く山名氏の領地で、一時期は尼子氏、江戸時代以降は池田氏が治めていた領地です。もしかすると、因幡出身の人々が集まって住んでいたので、このような名前がついたのかもしれません。
※前回の記事で昭和通りがお堀であったと書きましたが、それは誤りでしたので訂正致します。首都高速道路が走っている個所がお堀と対応していて、昭和通りは過去の街区をぶった切って出来ています。NEWS Xが建っている街区が西の街区のグリッドと比べて長手方向が短いのは、元々は街区が昭和通りまであったからでした。

9-4. NEWS X (1)

9. その他のこと

今回は昨年の初め頃より設計を始めまして、9月末日に無事に竣工した東京都中央区京橋2丁目に建つオフィスビル「NEWS X」について書いていきたいと思います。
南北に通る昭和通りと東西に走る鍛冶橋通りの交差点には都営地下鉄浅草線の宝町駅があります。その北西側の街区で昭和通りから入ってすぐの敷地に地上10階建て鉄骨造のオフィスビルとして竣工しました。敷地はまさに都心そのものですので、江戸時代から古地図などが残っており歴史的に敷地周辺がどのようであったかを窺い知ることができます。当時はお堀であった現在の東京駅を境に、丸の内側は皇居の手前まで大名屋敷が広がっており、八重洲側には町人の街が広がっていたようです。鍛冶橋通りの鍛冶橋はこの東京駅のお堀を渡る橋だったようですが、その名の通り町人地側には鍛冶町や畳町、南大工町など建築に関わる業種の職人町であったり、具足町、南塗師町といった工芸に関する職人の街だったことが想像できます。
昭和通りがお堀であったことは設計者として把握していましたが、実際に工事を開始して杭を打ったり、基礎をつくる段階で多くの地中埋設障害物が出てしまいました。新築の建物が建つ前の建物は、戦後の昭和中期に建てられたベタ基礎で3階建て程度の鉄骨造の建物だということは分かっていましたので、それ以前の建物で地中埋設障害物が出るとは考え難かったのですが、結果的に松杭が出ました。近接する昭和通りがお堀だったので、恐らく地盤が緩くて杭を打って建物の基礎としたか、あるいは場合によっては堀に面した場所で荷下ろしのためのデッキ状の構造体を作っていたのか。真偽は定かにはなりませんが、想像は大きく広がる、場所の時間を感じられる敷地です。

Kビル新築工事(第31回定例会議)

事業名・工事名

Kビル新築工事

日時

2014年8月27日 / 10:00~11:40

場所

トゥループロパティマネジメント(株) 第3会議室

出席者

設計監理(建築)
トゥループロパティマネジメント(TPM) : ST、MR、MT
設計監理(構造)
K構造設計事務所
施工
T社 : K(現場所長)、I(設備担当)、T(技術営業)
施工(電気)
H社 :
施工(設備)
O社 : A

1.前回議事録の確認

2.週間工程の説明

3.9月月間工程の説明

施工 K:
検査の予定としては、9/12に設計検査、9/22に施工者の社内検査、9/24の13:30~消防検査、9/25に主事の完了検査、9/26に施主・設計検査となっています。
設計 MR:
9/12の設計検査には、STと管理課のYも同席します。午前中の予定ですが時間はまた連絡します。
設計 MR:
1Fの柱の耐火塗装の磨き仕上については仕上日程を事前に連絡をください。すぐに状況を検査しに行きます。
施工 K:
引渡し書類の書式は、決まりのものなどがありますでしょうか。
設計 MR:
T社書式で良いです。
設計 MR:
機械警備ついても引渡しまでに施工を行いますので、現場での連絡調整をお願いします。
設計 MR:
1Fの溝型ガラスの施工は9/12までに施工を確認したいですが、段取りはどうなっていますか。
施工 K:
そのころには施工が出来ていると思います。

4.質疑

【インターホンポストについて】

設計 MR:
向きは北面で正面向きに変えて、石目地とサッシ枠外面とに合わせた位置としてください。
設計 MR:
その他は施工図の通りで良いです。

【カードリーダーボックスニついて】

設計 MR:
施工図の通りで良いです。

【エレベーターかごの床石について】

設計 MR:
施工図の通りで良いです。石目地幅はエントランスホール床石と同じ3mmで施工してください。

【1FのSW-1,2について】

設計 MR:
ガラスフィルムは取り止めで良いです。網入り透明ガラスのままで良いです。

【1Fの透明ガラス部分について】

施工 K:
衝突防止は必要でしょうか。
設計 MR:
本工事では不要です。必要であれば別途工事で対応します。

以上

2014.9.8 作成:MT

9-3. 色 (6)

とある人がド派手な色の服装をしていても、奇妙な目で周辺の人から見られる程度で、一般的には特段の規制を受けることはないかと思われます。しかし建物の外観となると場所によっては、条例などによってある程度強制的に、そうでなくても社会的な眼差しが向けられているということが、これまでの内容から分かるかと思われます。そういう意味で、建物の外観における色は多かれ少なかれ社会性を背負わざるを得ないと言っても良いかと思います。
これまでの例にさらに一つの例を付け加えると、千鳥ヶ淵に建つガエ・アウレンティ設計のイタリア文化会館も周辺の景観との調和という点で過去に論争になっています。

図9-3-6:イタリア文化会館

図9-3-6:イタリア文化会館

今までの議論の一方で、建物の内側、インテリアになるとそのような議論は殆どないでしょう。(本稿はあくまでもオフィスビルに関してのエッセイなので考えてみると、)とはいえ、オフィスビルに下の写真のようなカラフルなカーペットを張るような極端な例はあまり多くなく、一般的にはある程度抑制された色にすることと思います。この場合は社会的というよりも、そのユーザーあるいはデザインする側の習慣的な作法の中で色の決定などがなされていると考えれば良いでしょうか。

図9-3-7:カラフルなカーペット

図9-3-7:カラフルなカーペット