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4-16. 空調機 (2)
暖房に関していえば、直接室内で火を炊く方式では暖炉が西欧世界にはありましたし、日本でいえば囲炉裏や火鉢などが存在しました。現代でも残っているものとしては、炬燵がありますが、元々は木炭や練炭を入れた火鉢のようなものを熱源として使っていましたが、その後電気式の炬燵となって現代にも利用されています。火を利用する方式でいえば、ガスファンヒーターや石油ストーブなどもガスや灯油に火を点して燃焼させることによって暖房をするという方式のものです。筆者(30代)が小中学生時代ではまだ学校の教室の暖房は石油ストーブだったように思います。前方の教師の席の近くに暖房があり、前方の席と後方の席ではずいぶんと温度が違うものでした。ガスファンヒーターは未だ使われているご家庭もあるかと思いますが、石油ストーブは火災予防や一酸化炭素中毒などの危険性は拭えないのでかなり減っているのではないかと思われます。
また火ではなくて、お湯としたものも様々なバリエーションがあります。その最も簡易なものといえるものは湯たんぽでしょう。湯たんぽも元はと言えば火が暖めているのですが、エネルギーをお湯に一旦移しているので、直接人が暖をとるのはお湯からという風に考えることとします。湯たんぽは夜寝る前に布団の中の足下に入れて寝たものです。いわば即席の炬燵のようなものでした。これは日本のものだとばかり筆者は考えていましたが、フランスにも同様なものがあり、徐々に廃れてきてはいるものの未だに愛用している友人もいました。古代ローマのハイポコーストと朝鮮のオンドルのように、場所は違えどある目的の下では同じようなことをするものなのですね。
4-16. 空調機 (1)
4. オフィスビルの部分
以前に「熱環境」の稿でエアコンについて多少触れましたが、本稿では環境というよりも空調機そのものにフォーカスしてみたいと思います。
エアコンの機能としては基本的には室内を暖めることと涼しくすることの2点です。暖める方は古来より火を起こすことで暖をとることは比較的簡単でした。歴史的には古代ローマではハイポコーストと呼ばれる床暖房の一種のような仕組みがあったそうです。室内で火を炊くと酸欠になってしまうのは恐らく経験上分かっていたのでしょう。火を直接部屋で炊かないで、床を二重床のようにして、床下の空間に炉で炊いて暖められた空気を送り込むことで床を暖めるということをしていたそうです。当時の床素材は石だったでしょうし、蓄熱という意味では容量も大きくて快適な床暖房を実現出来ていたのではないかと想像出来ます。朝鮮半島で見られたオンドルも似たような床暖房の方式で、4世紀から7世紀くらいの時期には既に存在していたようです。オンドルの場合は火を焚くのは台所での調理も兼ねていたようです。多くのものが朝鮮半島から日本に輸入されましたが、オンドルも当然持ち込まれたようですがなぜか定着はしなかったようです。
4-15. 間仕切り (5)
軽鉄+ボードでの間仕切りの一方で、オフィス器具メーカーが製品として販売しているスチールやアルミの枠にパネルやガラスをはめ込んだものを使った間仕切りもオフィス空間ではよく見られます。
このような製品はパーティションと呼ばれたりしますが、恐らくオフィスのデスクのブースを構成するパーティションが、ブースでは高さが1m程度だったものが、その延長で天井まで上がったもの、といった認識からこのような呼ばれ方をしているのでしょうか。オフィス内の場合、間仕切りが必要なスペースとしては重役の部屋だったり、会議室だったりしますが、それらが必ずしも完全に閉じていなければならない場合、このようなオフィスメーカーが販売しているパーティションは使い易かったりします。室内空間の広がりを考えた場合、やはりガラス張りで視線が通っていた方がゆとりがある空間をつくれます。あるいは欄間として上部がガラスになっていて天井面だけ連続しているように見えるだけで印象はずいぶんと違うものです。中にはパーティションの枠内にブラインドを仕込める製品もあり、必要に応じて閉じれたりするものもあります。
4-15. 間仕切り (4)
間仕切りが内壁であり、非耐力壁であれば基本的には何で作られていても間仕切りとなりますが、現在で最も一般的な作り方は軽鉄にボードを貼付けるようなものです。
上図はボードが貼られる前の軽鉄(あるいはLGSと呼ばれることもあります。)が組まれた状態のものです。天井と床にランナーと呼ばれる部材を沿わせて、それを繋ぐように縦にスタッドを立てていきます。それだけだとスタッドがたわんでしまうので、振れ止めがスタッドを繋ぐかたちで付けられます。開口部もその形状に合わせてランナーを走らせ、その内側に建具の枠を仕込みます。
この軽鉄を下地としてボードを貼っていくわけですが、一般部に使われるものがせっこうボード、その他水廻りなどには耐水性せっこうボードやケイカル板といったように、用途によっていくつかの種類のボードが使い分けられます。このようなボード壁がよく使われるのは、オフィスビルなどでは設計によって建築基準法上、内装制限がかかることが挙げられます。この時には下地および仕上げを不燃材とすることが求められるので、下地を木で組んだりするとこの規定に抵触することになります。ボードも同様で仕上げに木を使えないこともあるので、この軽鉄+ボードの組合せは内装制限をクリアする上で最も一般的な解となっています。ちなみに上の写真の背景がボード仕上げ面となっていますが、そこから一般的には塗装仕上げあるいは壁紙を貼ったりして、普段我々が見ているような壁の状態に仕上がっていきます。
4-15. 間仕切り (3)
現間仕切りはいわば壁の一種ですが壁の分類を考えてみると、外壁/内壁、耐力壁/非耐力壁という2つの水準で壁の特徴を大きく切り分けることが出来るかと思います。このマトリックスで考えれば、間仕切り壁は内壁の非耐力壁という風に考えれば良いでしょう。
元々、柱梁構造の日本建築は大雑把に空間を用意してしまった後に、簡易な壁を建ててスペースを区切るという発想に繋がるとは自然の流れといえるように思います。壁ではありませんが、建具もスライディングの板戸、襖、障子といった日本建築で見られるものは、納まりとしては多くは柱梁と同面でそれらを枠としても使います。壁に穴が穿たれてスウィングドア、窓が取り付く西欧的なあり方とは性格を全く異にします。西欧の建具が壁に取り付くもの、壁に付属するものと考えるなら、日本のこれらスライディング系の建具は独立した可動壁のようなものです。これらは壁ではありませんが、軽快にスペースを区切る役割をしているという意味でやはり間仕切りの1つのあり方です。
これらの建具のあり方をよりライトにした形が屏風だと思われます。「風を屏ぐ(ふせぐ)」ということが言葉の由来だそうで、古く中国の漢の時代には風よけの道具として存在していたようです。日本には7世紀に伝えられて以来、日本の室内装飾の設えとして取り入れられており、狩野永徳を代表として屏風が日本美術の発展のキャンバスとなっています。屏風は一扇(一枚)だけだと倒れてしまうので、いくつかの扇が繋がれて一隻となります。古くは一隻六扇(六曲)が一般的だったようですが、単純なフラットな1枚ではなく複数の扇の組合せであることが、絵を描く際の独特な構図を生み出す源であったということは間違いありません。
ところで屏風は現代日本においても、式典の背景としておかれることが引き続き行われています。有名人が結婚した際の記者会見などでは金屏風が背景に立てられるというのは良く目にする光景です。