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8-5. 地区計画・総合設計制度 (3)
ここで地区計画の種類について目を通しておきたいと思います。大きくは地区計画の「一般的な活用」と「特例的な活用」の2つに分かれます。さらに「一般的な活用」の中には「一般型地区計画」と「再開発等促進区を定める地区計画」の2種類があるようです。前者は一般的に用途地域が定められている土地などにおいて、
1、 良好な市街地環境の形成・保持を目指す
2、 区市町村マスタープラン等に即した望ましい市街地像の実現を図る。
ことを目的として、基準法の緩和というよりも制限を追加するような措置がとられているエリアです。例えば、隣地境界や道路境界からの建物のセットバック、用途の制限。建築基準法から外れる内容でいえば、生け垣や柵の構造の制限や建物の形態や色彩といった意匠の制限などが挙げられます。
後者の「再開発等促進区を定める地区計画」については、工場跡地などの未利用地や密集市街地、老朽化した住宅団地などが想定されているということです。六本木ヒルズやミッドタウンなどはこの地区計画を活用した例のようです。六本木ヒルズが建つ前は北日ヶ窪団地という団地や木造の低層住宅地、あるいは未だに毛利庭園と呼ばれる旧大名屋敷があった場所です。このような場所を「高度利用」するのがこの地区計画の目的だということで、容積率、建ぺい率の緩和などが盛り込まれています。
8-5. 地区計画・総合設計制度 (2)
上のオフィスビルは東京都中央区京橋に建てられたオフィスビルですが、周辺の建物に比べて頭1つどころか4層分程度高く建っています。このエリアでは中央区によって策定されている地区計画があります。こちらのモチベーションとしては、「都心部の高地価、オフィス化にともなう居住環境の低下や、狭い道路からの道路高さ制限などから満足な建築物の更新(まちづくり)が十分にできないといった 問題を解決するため、地区計画区域を指定しました。地区計画では、地区レベルでの容積率(基準容積率を超えることができます。)や高さの最高限度などの ルールを定めることにより、地区の特性にあったまちづくりを可能にします。」とあります。そこで具体的な要件としては、敷地面積の最低限度、用途の制限、壁面位置の制限、容積率の最低限度と緩和、高さの最高限度などが明記されています。「オフィス化にともなう居住環境の低下」対してこれら要件がどのような解決策を提供しているのかは良くわからないのですが、少なくとも道路高さ制限を緩和して、代わって最高高さ制限で建物の高さを抑えるということで、上図のような建物が建ったといえます。
ただし、先にも述べたように「住民と区市町村」との連携というよりも、容積率の緩和や斜線の緩和をすることによって土地の高度利用を進めるのが明らかなゴールです。そういう意味ではここでいう「住民」は一般の人々というよりも、地主であるとかディベロッパーといった企業であるということでしょう。
8-5. 地区計画・総合設計制度 (1)
8.オフィスビルの法律
都心部を歩いていると街並みの中で頭1つ飛び出している建物を時に見かけることがあります。六本木ヒルズやミッドタウンといったランドマークとなっているような建物もそうですし、超高層建築物でなくて比較的小さな建物でも目につくことがあります。これらは高さに関することなので、先に8-1「高さ制限」の稿で簡単に触れましたが、地区計画あるいは総合設計制度に基づいて、基準法の規定が一部緩和、あるいは変更されたことを前提としてこれらの建物が成立しています。
地区計画とは何か?東京都都市整備局のホームページにはこのように解説がなされています。
「地区計画とは、地区の課題や特徴を踏まえ、住民と区市町村とが連携しながら、地区の目指すべき将来像を設定し、その実現に向けて都市計画に位置づけて「まちづくり」を進めていく手法です。」
ここで謳われている「住民と市区町村とが連携」しているかどうかは疑問の余地がありますが、建築基準法や都市計画法といった全国一律の同じような枠組みで建築物を帰省するのではなくて、「地区の課題や特徴」を汲み取ったまちづくりを考えていきましょう、ということが制度上の趣旨だと思われます。
4-16. 空調機 (9)
このような仕組みを使って1つの循環するシステムとして出来たのがヒートポンプです。ポンプといえば水を高い位置にくみ上げる機械ですが、位置エネルギーをポンプによって与えることで水が重力に従って落ちていく、その際には運動エネルギーをもつという関係になっています。ヒートポンプというのはそのサイクルをイメージしたもので、熱は温度が高いところから自然と低いところに移っていきますが、その熱を温度が低い位置から高い位置に上げるのがヒートポンプです。そのために先に挙げた、蒸発→圧縮→凝縮→膨張→蒸発というサイクルをつくるものです。
具体的に冷房を考えます。空調機は基本的に室内機と室外機というものがあります。それらの間には冷媒という物質が行き来しており、熱の移動を担っています。まず、室内で冷媒が蒸発するとその気化熱で室内機側の空気が冷やされます。気化した冷媒は暖まった状態で室外機側に移動して、そこで力学的に圧縮されます。圧縮された気体は液体に変化し温度が上がるので、そこでラジエター状のものに冷媒を通しファンで廻すことによって、周辺の空気に熱を逃がします。そのようにして温度が下がった冷媒はエアコンに戻り、同様のサイクルを繰り返すわけです。最終的にラジエターに風を当てるという仕組みは、先述の古代エジプトの例と何ら変わりはありません。
ところで暖房の場合はこの逆のサイクルをすることによって、室内側の空気を暖めるわけです。
4-16. 空調機 (8)
ものを冷却する原理としてはこの気化熱がベースになります。より身近な現象を思い起こせば、スプレー缶を使用した際にそのスプレー缶は冷やされるということがあります。それは管の中に圧縮されていた液体が気体として放出されるためです。このような原理をより大掛かりに使用したのが冷房であり、冷凍庫、冷蔵庫も同じ仕組みを利用しています。
これらの仕組みは学術的には逆カルノーサイクルといって、1824年にフランスの物理学者のカルノーが理論的に位置づけたとされています。実験的にはそれより前に18世紀半ばにアルコールを揮発させることで物体を氷点下まで冷却させることに成功し、1820年にはイギリスのマイケル・ファラデーが圧縮したアンモニアを気化させて物体を冷やすことにも成功しています。この一旦、物体を圧縮するという過程を経ることによって、冷媒を他のエネルギーによって圧縮、膨張させて温度をコントロールするという流れに繋がります。1840年代にはこれらの仕組みを利用して、まずは氷を作りそれで病院の病室を冷やすということをやっているので、この時点で部屋を冷やす冷房という発想にたどり着いたといえるでしょうか。