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初めに選ばれる建築設計Ⅰ 建築設計業務の内容⑦

基本計画の実例紹介②

次に、敷地奥の凹凸の敷地形状を有効活用するために、同空間に特別避難階段を納め、6、7階には避難バルコニーを設置することで2つの直通階段を設けない形にします。
また、渋谷・センター街での商業施設という点を考慮して、建物から独立した形で前面の道路境界に沿った大型の看板を工作物として設置することを検討します。この看板は、渋谷のセンター街という場所にこの建物が埋没してしまわないようにするための、建物の顔となる部位でもあります。
当然ながら、看板などの工作物については渋谷区で定められている規制から逸脱しないように、規制の調査を行ったうえで規模、形状などに配慮をします。
こういった検討を加えながら地上7階、地下1階のビルの基本計画が形作られていきます。
この段階での検討資料は次のようなものになります。

基本計画の実例紹介②

8-5. 地区計画・総合設計制度 (21)

また計画地に公共施設、とりわけ防災施設を整備することでも割増を受けることができます。ここでの防災施設とはかまどベンチ(通常時はベンチだが、被災時にかまどとして転用出来るベンチ)、マンホールトイレなどがそれにあたります。

図8-5-3:かまどベンチ

図8-5-3:かまどベンチ

図8-5-4:マンホールトイレ

図8-5-4:マンホールトイレ

上の写真を見るとなんてこともないものではあるのですが、いざ震災に出くわすと最も深刻な問題の1つがトイレだそうです。マンホールトイレはこの装置が直接下水道に直結していて、地上では専用のテントを張って個室のトイレとするのだそうです。
また防災とは切り離されたところで、公益施設として保安、公害防止、地域社会の文化、教育などの向上、交通の機能の向上、歴史的建造物、子育て支援施設を設けた際に緩和を受けられます。さらに道路の無電柱化、自転車シェアリングのポート、ステーションといったものについても緩和を受けられるそうです。
他にも「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」という変わったネーミングの条例があるそうですが、その条例で「街並み景観重点地区」に指定された地区内で、景観配慮型建築物あるいは景観形成型建築物に適合するものはそれぞれ割増容積率が受けられるとのことです。

8-5. 地区計画・総合設計制度 (20)

さてここまでは総合設計制度の前提の要件となる事柄でしたが、4章以降は具体的に緩和の基準が掲げられています。4章では容積率、5章では斜線制限についてです。
容積率については、公開空地を初めとしていくつかのファクターから緩和を受けられることが出来ます。割増することが出来る容積率を算出する数式があるのですが、それらの係数は公開空地の質(緑の質)、総合設計の種類、住宅の種類、環境性能、敷地の規模に応じた係数が上げらます。またそれ以外にも、防災に貢献するものも容積率の割増を受けられます。1つはとが指定する緊急輸送道路という震災時に安全に使用出来る道路の沿道の建物が、十分な耐震性能を備えていると判断された時に一定の割増を受けることが出来ます。また「耐震改修促進計画」において指定される民間特定建築物が一定以上の耐震強度がある場合にも受けられます。

8-5. 地区計画・総合設計制度 (19)

また総合設計においては公開空地以外にも有効空地、住宅、環境性能、防災施設といった内容が多角的に評価されます。有効空地というのは、敷地内に歴史的価値のある保存するべき建築物がある場合に、そこについては空地として評価しましょうといったこと、あるいはある程度低い位置にある屋根面は一定の係数をかけて空地として評価するといったことです。ただ建物が建っていなければ空地とするだけでなくて、弾力的に空地あるいはその上に空いているスペース(空所、といっても良いでしょう)を評価しようという方向性です。
また環境性能は再生可能エネルギー利用や環境負荷の低減を推奨する試みで、住宅用途または非住宅用途に分けてそれぞれの条件が定められています。防災設備についても、防災備蓄庫の有無、自家発電施設などの内容を評価するものです。このように総合設計では建築基準法が評価しないような内容についても包括的、多角的に建築物を評価しようという試みです。この制度が都市的にインパクトの大きい一定規模以上の開発に限っているのは実際の運用上仕方がないことかもしれませんが(許認可の手続きが一般の確認申請に比べて煩雑になるので)、規模の大小に関わらずこのような多様な評価を建築物に与えていくというのは良い試みだと思われます。

8-5. 地区計画・総合設計制度 (18)

さて繰り返しになりますが、総合設計では容積率と形態の制限(斜線制限)の緩和が一定以上の空地を確保することにより得られるということになっていますが、要綱の章立てとしては緩和の具体的な運用は後回しにして(4章および5章)、まずはそれ以前の計画の条件が定められています。2章の計画要件と3章の計画基準がそれにあたります。
先に挙げた総合設計の種類に応じて細かい条件が違ってきますが、まずは2章で共通の要件として羅列されているのが、適用区域(すなわち都市計画区域内であること)、空地率の最低限度、接道の長さ、公開空地の最低限度、歩道状空地および広場状空地、外壁のセットバックといった内容です。以上は共通の条件が定められていますが、それ以外に総合設計の種類ごとに適用区域、敷地面積の最低限度、全面道路の幅員などがそれぞれの内容に応じて定められています。
続いて第3章では2章で挙げられた項目ごとに具体的な内容が基準として書かれています。例えば、公開空地には歩道状空地、貫通道路、アトリウム、水辺状空地、広場状空地などがあり、歩道状空地ならば幅員が3m以上なくてはならない、あるいはアトリウムは幅が30m以上あり、地上から天井までも30m以上なければならない(!)といった内容です。また総合設計においては、これら公開空地に対する質を定量的に評価する内容も含まれており、例えば歩道状空地は長ければ長いほど歩道として有効であると判断されて、それに応じた係数が評価される面積に対して乗算されるというのも注目すべきポイントです。