ときわ台のアパートメント

この建物は東京都板橋区に建つ地下１階、地上５階建ての集合住宅で、単身者用の住戸７戸から成る。

東武東上線のときわ台の駅から続く緩やかな坂を10分程度上がったところに敷地がある。敷地の住所は富士見ヶ丘となっているので、過去にはこの敷地からも富士山が望めたに違いないが、現在は戸建て住宅やアパートが並ぶ典型的な郊外の風景となっており、富士山はもちろん遠景はあまり望めない。
敷地の北側にはこれまた富士見街道と呼ばれる由緒があるらしい街道が通っているのだが、環七からの抜け道となっており、富士山を望むような「情緒」よりも、大型トラックが頻繁に通行する「殺伐」といった言葉の方がしっくりくる。南には古い木造家屋、東には木賃アパートがほとんど距離をおかずに建っていて、西には狭隘道路を挟んでマッシブな雑居ビルがあり、お世辞にも良い住環境とは言えない。ここに容積率をなるべく消化して単身者用の住戸を積むことにすると、地下１階を使いつつ地上５階建てが適当だろう。

ところで上述のような周辺環境を考慮すると、地下１階から地上５階まで高さ方向にかなり周辺環境の違いが出てくるため、同じ形式の住戸を重ねるのはリアリティがない。また事業的に1住戸あたりの面積を考慮すると戸数は７戸が適当だということで、6階の中に7戸を入れることを考慮すると、自ずと各住戸はそれぞれ違ったプランニングとなっても良いのだろうと思う。全体の形式としては中央に階段室を配置して囲むように住戸を配置し、細長い部屋が階段室をまとわりつく様にしている。各住戸L字型、ないしL型を重ねたようなメゾネット形式になっており、高さによって変化する周辺環境に対する距離感をテラスや窓のサイズで調整している。当然、富士山は望めないが、それぞれの住戸からそれぞれの高さの周辺環境を近景として望むものが出来ている。