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老人のための家
高峰秀子さんという名優がいます、もうおばあちゃんですが。すごく好きな映画で成瀬巳喜男監督の「浮雲」に出ていました。
その彼女は家を壊して、家財道具の殆どを捨てて、集めていた食器類も普段使うものを除いて処分して、小さい家をつくったという記事を読んだことがあります。ワンルームの部屋に老夫婦2人です。例えば美しい茶碗や食器を人の雰囲気や料理に合わせて取っ替え引っ替えして、それも作家がつくった食器だったりすれば、老夫婦には管理するのには大変な労力がいるわけです。食器によって扱い方が違うし、収納する棚がいっぱい必要だし。ちゃんと管理しようとすると莫大な手間がかかるので、体力が無いとできません。すべてがそういう風にして体力気力がないとできないし、歳をとると余計なものはいっさいいらなくなるわけです。趣味でも、将棋もしなくなるし、焼き物もしなくなるかもしれないし。そもそも、必要なものがなくなってくるんですね。
そう考えると、老人が本当に居心地良く住める面積というのは20坪もいらなくなるのではないでしょうか。寝室があって食卓があって、使いやすい風呂があって。本棚もたくさんはいらないよね。それに健康のためには気温の変化がないほうが良いから、居室と寝室を廊下で結ぶのではなくて、ワンルームにした方が良いでしょうね。安全上はお互いにいつも見えていた方が良いし。転んで骨折したときにも、声を出せばすぐに伝わるように。
そういう老人のための家をやってみたいという気持ちはありますね。需要は絶対あるはずなんですよね、お金持ちで老夫婦になって子供がみんな独立しちゃってね。
ドリーム・ガールズ
前から観ようかと思っていたのですが、ある友人に勧められて「ドリーム・ガールズ」を観ました。そんな風にして勧められると、勧めた人が今どういう状況にあるのかとか、その状況と映画との関連性などを考える癖があります。
その映画で主人公の一人に「ビジネスは別だ」というドリームガールズのマネージャー役の人がいて、人間関係が壊れて最後にはその人の周りからみんなが逃げて行くんですね。ビジネスって儲けるための論理だから、やっぱり人間の感性がついていける範囲というのはあるんですね。その彼はプロダクションをやっていて、最初は作曲家だとかドリームガールズのメンバーを家族みたいにしてやっていくわけだけれど、人の気持ちをあまり考えずにやっぱり「ビジネスはビジネス」って割り切っちゃうんですよ。それで成功していくんですけれど、一人去り、また一人去りっていう風に。うちの会社でいうと、それに一番近い人間は当然僕だろうね。(笑)
みんな、だいたいの人は論理、理性で動いていると思っているんだよ。特に頭のいい人は。でも、そうじゃないね。
勧めた彼の話に戻すと、彼はきっと逃げる方を考えていたのかな。(笑)
神林長平
神林長平さんというSF作家がいます。「戦闘妖精・雪風」というのがあって、戦闘機が自分の意思をもつんですね。色々なパラレルワールドがあって、次元が変わるであるとか。同じ人間が次元毎にいるわけ。そういう小説を書いている。その人の本は古本屋で売っていない。みんな売らないんです。(笑)100円で売っているものをたまに買いますが、多くは読み捨ての本なんですね。
それで、彼の言った好きな言葉があります。
「屍だと思えば、すぐに屍になれる。鳥だと思えば、すぐ鳥になれる。自分を鳥だと思えば、君はすぐにビルの屋上から飛んで行くことができる。自分が屍だと思ったら、その瞬間にすぐに屍だ。腐った臭いが部屋中に充満してくる。」そういうようなことは、本質ですね。現実ではないですよ。現実と本質は違うから。結局、人間は自分が何かをしたいとかいう欲求があれば生きるんでしょうね。なくなった時に死ぬんでしょうね。
*
<1>
わたしは、
言い訳をする。
言い訳をする為に
生まれてきたから。
わたしは、
狂う。
狂うために、
生まれてきたから。
<2>
あなたの不在を、定義してみる。
わたしの存在を、定義してみる。
不在と存在の関数について定義してみる。
何処から来たのかを定義してみる。
何処へ行くのかを定義してみる。
放棄してはいけないものを定義してみる。
抱えきれないものを放棄してみる。
放棄してはいけないものを放棄してみる。
<3>
菜の花の畑を見下ろす時、
何処から来たのかを忘れてしまう。
ポニーテールを編んであげる時、
何処へ行くのかを忘れてしまう。