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窯の温度はゆっくり上げていくんだね。一時間あたり何度とかって。下げるときも同じ。窯に温度計が付いていたりするから、それを見ながらね。自分でつくった薪とガスの併用窯で作ったときは、48時間寝なかったこともあります。それは大変だった。そのときは温度計を使わないでやったのだけれど、そのときはコーンって言って、ある一定の熱量になったら倒れるものを入れておくんですよ。それを覗いて、見ながらね。あとは色味を入れておいたり。

全部、自分でやったね。教わるのが嫌いだから(笑)

土2

昔の備前は山の方から採った土なんだけれど、今は田んぼから採った土を使っています。上の土をとると、下に粘土があるんですね。その粘土の層を切って、埋め戻します。塊で持ってきた粘土は、板を両端においてガイドにして針金で薄く切ります。それを手で揉みながら小石を取っていきます。これが土が持っているものを一番棄てないで、土をつくる方法ですね。後は水に土を沈殿させる水樋という方法などもありますが、水に成分が溶け出しちゃいますから。

結局、焼物の色は中に残っている色々なものが化学反応をして出るから、例えば備前なんかは何もかかっていないけれど全然違う色が出るわけです。

熱源でいうと、電気は純粋な熱源だから化学反応を起こす作用は少ないよね。多いのは薪で、いろんな成分を含むのもそうだけれど、水分も化学反応を促すんですよね。薪の炎には水分が含まれているからね

土1

 ―萩とか備前とか、ぱっと見て分かるものなんですか?(本橋)

何焼きというのは基本的には土で分かるんだね。その土地で採れた土で、ってことなんだよね。益子とかはクセがない土だから、全国からいろんな土を取り寄せてブレンドして使っているんだよね。そういう意味でいうと前衛的なことをやっていて、芸大の作家はけっこう益子に行ってやっている人が多いみたいですね。

 ―窯の違いはないんですか?(本橋)

窯の違いで焼物の名前が変わるというのはないね。銘々が自分で窯を造って焼いているから。だから萩の土を通信販売で買ってきてもいいのだけれど、ただ土も色々なものをブレンドしてやるから、こだわる人は自分で山に採りに行ったりね。山から採ってきた土をそのまま使うことは、まず無いわけです。石ころが入っていたりするし、あと採ってきてすぐは土が生きているから使えないんだよね。すぐにひび割れするような土だから、それは何年か寝かします。採ってきたばかりの粘土は、有機物がいっぱい入っているんだよね

焼物の値段

同じ作家でも当然、出来が良いのは高いし、悪いのは安いよね。やっぱり見る人で共通するんだよね、良い悪いは。良いものはみんなが良いと言うし、つまらないものはみんながつまらないと言う。

焼物は湯呑みが一番安いんですよ。高いのは抹茶茶碗、次はお猪口、ぐい飲みです。抹茶茶碗は美術品で通っているんだよね。お猪口の方は蒐集しているマニアがいるから。で、湯呑みはただの日用品だから安い。

陶器と磁器

萩は湯が冷めないんだよ。焼き締まっていなくて中に空洞がいっぱいあるから。

元々、陶器は磁器とは違って焼き締まらないんだよ。磁器は基本的にはガラスと同じ。陶器はそうじゃなくて、ちょっと固くなってくっつくだけで、部分的には溶けているけれど全体ではないから、中に隙間がある。だから水を入れると漏るから、釉薬をかける。釉薬は全部溶けて、強度を増すし、水も漏れないようになるんだね。