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構造設計のはなし

やっぱり構造屋さんというのは、本質的にはデザイナーですよね、力学のデザイナー。だから意匠屋さんがどういう風にしたいのか優先順位を察知して、色んなアイディアを提案してくれると楽しい。その理由も分かりやすく説明してくれれば、尚更です。だから構造屋さんとの打ち合わせは、そういうやり取りが多いほど面白いです。例えば「こうしたい」という話をして、「できません」なんて返事をされたら、これはもう最悪ですね。(笑)

パニックオープン

最近、電気錠について打合せを重ねていたのですが、行き違いがけっこうあったんですよ。なぜ行き違いが起きるかというと、パニックオープンといえばみんな具体的なことを想定しないで、何かがあった時にはカギは開かなきゃいけないと思っている、一級建築士も設備設計も。工事会社の現場の主任も担当もそう思っている。おかしいよね。

火災、地震が起きたらカギが自動的に全部開くビルを探してこい、って言いました。電気錠というだけで、通常のシリンダー錠とは別だという概念を勝手に創ってしまっているんですね。パニックオープンという言葉だけ独り歩きして、その言葉から連想する世界を貧しい想像力で創っちゃっているんです。

コンクリートのはなし

新潟県中越沖地震がありましたが、東京もけっこう揺れましたね。余震も長い間揺れましたね。長い周波数の揺れだったらしいですね。日曜日だからいなかったけれど、ここ(聖路加タワー)とかもけっこう揺れたんじゃないかな。これは揺らして解消させるという考え方だろうから。

でも今は30階くらいでも剛構造のものもあるんですよね、SRCで踏ん張って解消するという。月島にあるマンションで2年前に竣工したものですね。コンクリートの精度が上がったから、超高密コンクリートって言うのかな。超高層で剛構造というのはごく最近ですよ。従来はS造の柔構造でスラブを出来るだけ軽くしてという感じだったんですけれどね。

コルビュジェ展

コルビュジェが設計した海辺にある奥さんの為の小屋(カップマルタンの休暇小屋)、3.6m四方くらいの小さいものですが、窓の形とテーブルが面白かったですね。その家が自分の終の住処になるだろうと予言して、予言した通りになったんですね、溺れて。

コルビュジェがつくったある住宅のキッチンの天井高は2,100あるかないかくらいでした。あとは居室の天井高は2,260です。コルビュジェは186cmもあるんですよ。立ち上がって手を伸ばしたところはちょうど2,260ですね。あと階段はけっこう緩かった。

石工で作ったロンシャンの教会の模型も良かったね。縮尺の違う2つが置いてありました。あれは凄い、あちこちを多くの人がが真似している。天井のスリットやラッパ型の明かり取りの窓とか。いい加減にパラパラと窓を開けているようだけれど、けっこう幾何学的です。あの人の絵自体も多くが黄金分割で出来ているそうです。あんなに色々な大きさも形も違うような窓をつくると、それは楽しいよね。久しぶりに楽しかった。でも私はラッパ型の奥行きをもった窓の実物は見たことないんですよね。

納まり

年間何十棟もやっている建築家だとなかなか厳しいですよね。名前が残る作品は難しい。

昔に木造をいっぱいやっている建築家の作品を見に行ったけれど、やっぱり納まりで露呈しちゃうんですよね。納まりが納まっていない、見ていられないんですよ。平面のプランとかファサードとかのデザインの良し悪しはきりがないけれど、納まりだけは誰がやっても一緒で、良いか悪いかが分かります。納まりが悪いというのは中学生の木工クラブ並みで、見ていると寂しくなりますよ。(笑)100棟も200棟もやっていると、そういうところは気にならなくなるんでしょうね。緊張感が緩む。寂しいけれど、仕方が無いよね。