老人のための家

高峰秀子さんという名優がいます、もうおばあちゃんですが。すごく好きな映画で成瀬巳喜男監督の「浮雲」に出ていました。

その彼女は家を壊して、家財道具の殆どを捨てて、集めていた食器類も普段使うものを除いて処分して、小さい家をつくったという記事を読んだことがあります。ワンルームの部屋に老夫婦2人です。例えば美しい茶碗や食器を人の雰囲気や料理に合わせて取っ替え引っ替えして、それも作家がつくった食器だったりすれば、老夫婦には管理するのには大変な労力がいるわけです。食器によって扱い方が違うし、収納する棚がいっぱい必要だし。ちゃんと管理しようとすると莫大な手間がかかるので、体力が無いとできません。すべてがそういう風にして体力気力がないとできないし、歳をとると余計なものはいっさいいらなくなるわけです。趣味でも、将棋もしなくなるし、焼き物もしなくなるかもしれないし。そもそも、必要なものがなくなってくるんですね。

そう考えると、老人が本当に居心地良く住める面積というのは20坪もいらなくなるのではないでしょうか。寝室があって食卓があって、使いやすい風呂があって。本棚もたくさんはいらないよね。それに健康のためには気温の変化がないほうが良いから、居室と寝室を廊下で結ぶのではなくて、ワンルームにした方が良いでしょうね。安全上はお互いにいつも見えていた方が良いし。転んで骨折したときにも、声を出せばすぐに伝わるように。

そういう老人のための家をやってみたいという気持ちはありますね。需要は絶対あるはずなんですよね、お金持ちで老夫婦になって子供がみんな独立しちゃってね。