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作家のレベル
ハードボイルドや刑事もの、探偵ものだとかの中間小説を読んでいると、この主人公はなんて知能が低いんだってよく思うんですよね。僕ならばこうは思わないということがしょっちゅうです。
―それは結局は作者のレベルじゃないですか。(本橋)
主人公と作者の知能のレベルはイコールだと思うんだよね。もっと違うように思いようがあるだろって腹が立ってくる。でも、大沢在昌さんの「新宿鮫」とかはいいね。これは読んでいて不愉快にならないけれど、そういう本は少ないね。
*戦場のニーナ
なかにし礼さんの「戦場のニーナ」を読んだ。この人は期待を裏切ることがない。良いものにめぐりあうと本であれ絵であれ茶碗であれ祈りのようなものを感じてしまう。ちかごろわたしは新鮮な気持ちになることがある。以前はわからなかった感性が生まれてきているようにも感じる。その感性が1年毎に変容しつづけているようにも思う。なかにしさんは「自分はどこから来たのか。自分は生きるに値するのか。値するなら死後にも意味はあるのか」と問い続けている人のように思える。
「法令遵守」が日本を滅ぼす
郷原信郎さんの“「法令遵守」が日本を滅ぼす”“あなたの法令遵守原理主義そのものが元凶なのです”という本を法律の先生から戴きました。オイルショックの時のトイレットペーパーの買い溜め、米が不作の時の日本米を買う為の行列、セット販売のタイ米がゴミ箱に捨てられていたという記事、建築基準法が6月に改訂され、建築確認業務が麻痺し、建材業者や工務店の倒産が増えているという話、等々を連想してしまいました。情緒的反応を繰り返し現象の本質をとらえようとしない国民、ということなのでしょうか。
村上春樹
村上春樹翻訳の「ロング・グッドバイ」を読んだのですが、文章がびっくりするくらいすごく良かった。あの人は僕より3つくらい下でしょうか。対談とか紀行文とかもよく目にしますが、小説の数を数えてみたら意外と少ないんですね。
初期の短編で「蛍・納屋を焼く」は「ノルウェイの森」の最初の方と一緒ですね。最近読んだんですが、私の青春時代と近いなって感じがしました。昭和40年代ですね。これは真面目な、純愛を迫る人は嫌でしょうね。あとは「海辺のカフカ」とか何冊かを読みました。
彼はA型ですかね。「羊をめぐる冒険」の主人公はA型なんですよ。血液型を聞かれてくるシーンがあって、この作家もA型かなってね。
吉村昭、吉本隆明、江藤淳
最近読んだ本で面白いなと思ったのが吉村昭さんの「死顔」というものです。「自らの死を自覚し延命治療を拒んだ著者が遺書のように書き残した短編」とあります。死と向き合っていて、とても良かったです。最後のものは活字にする前に死んじゃいました。奥さんは作家の津村節子さんです。
あと最近読んだのは、吉本隆明さんの「遺書」です。10年くらい前に新刊ででたものが、最近文庫本になって。前にも手に取ってみて読もうかどうしようか迷って読まなかったのだけれど、今回読んでみました。そこで「生涯のうちで必ず一緒に一生暮らしてもいいかなと思う相手が一人は見つかる」って言っていたのは、吉本さんです。それは僕もそう思いますね、何の違和感も無く一緒に住んでも良いなと思う相手がね。それが70歳で訪れるのか、80歳で訪れるのかは分からない、と吉本さんは言っています。例えば80になって余命幾ばくも無いと。もしそこで出会って、残りの数年をどうするのかというときに、一緒に暮らすのか。それも良いだろう、あと1年しかなくても。と、そんなことを言っています。
僕が学生の頃は、吉本さんは超カリスマだった。わたしは評論家の人の本は滅多に読まなかったから。でも吉本さんの詩集は読んで、あれは良かったね。初期の頃の詩集を集めたもので。あとは『言語にとって美とは何か』というのを読んだけれど、覚えてないから全然理解していなかったんだろうな。
当時、人気があったのは吉本さんと江藤淳さんでした。江藤さんは大学の近代文学のときに「『成熟と喪失』は良いよ」って教師から言われて。短い評論だったけれど良かったね。