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コミュニケーション

22の終わりに入った前の会社にいた頃、会社で問題が発生したとしますよね。すると幹部会が開かれて、最終的に社長がどう判断するか、その問題に対して社長がどう思っているかは、ほぼ99%はわかりました。はっきり言って、いろんな問題に対して社長がどう判断するかをわからないのは、見込みがないですね。僕はわからなくなったからやめたんですよ。3年経ってから外れるようになったんです。

やっぱり簡単に言うと、我々にとってビルのオーナーとかテナントさんはお客さんだけれど、お客さんのニーズがわからないと商売になりませんね。色々な問題に対して社長がどう考えるかをわからないと、給料は上がらないですね。やっぱりお客さんとのコミュニケーションと上司、部下とのコミュニケーションは一緒だと思います。

アンチ・カーネギー

カーネギーという人の書いた本を読んだんですよ。僕が23,4の頃、部下が6人くらいいて、毎日ミーティングしていました。仕事の内容、その日あったこと、翌日の予定のこと、全部根掘り葉掘り聞いて。そういうときにカーネギーの本を読んだら、こう書いてあった。「仕事ができない人に仕事を出来るようにする、それに使うエネルギーを出来る人間を探す方に使えば、結果はその何倍も出る」って書いてありました。その時に私は、カーネギーは嫌いだなって思いました。自分の部下って、一生懸命やっていれば結果が出なくてもなんとかしてあげたいという気持も出てくるし。それを否定したわけですね。

リフォームの発注、コミュニケーション その2

―例えば、そのビル経営代行の担当者は必ずしも建築教育を受けているわけではないですよね。そうなると、建物に対して空間であれ材料であれ、そういう見方をしたことがないだろうし、なかなか難しいとは思います。

問題はそういう見方をしたことが無いということですよね。ところが僕の場合は23歳の頃から、「このビルの作り方はおかしい、空間とか材料の選択を間違っている。正しく選択をすれば、間違いなく家賃を2割高く取れる。」というのを、大手の設計事務所のチーフとやりあっていましたからね。

―その建物の不動産的な価値が空間とか仕上げであるとか、実際的なモノの関係性に基づいて出来ているということが、判断できるということですよね。でも、トレーニングを積んでいない人はそういう眼差しでは見られないでしょうね、きっと差が分からないと思うんですよ。ぼやっとした質の差は感じられるのだけれど、その差がどのようにしてできているのか分からないから、具体的に発注することが出来ないのではないでしょうか。

それは、まさにその通りです。それでもっと意識の内側に入ってみると、興味がないんですね。(笑) やっぱりうちの社員でみると、すごく真面目で頭もいいんですよ、ちゃんと書類も書けるし。でも自分の独断で「この材料でいいんだ」ってバシっという人はいないね。そのバシっと言った時の結果は2つあって、それで評価が上がる場合と、一方で完全に否定されて阿呆扱いされるリスクもあります。どちらかというと、否定されるリスクに対して敏感ですね。

僕は不動産屋に勤めていた若い頃、中小企業の社長さんであるとか大企業の総務部長さんにビルを案内していました。その時に彼らがどういう感想をもっているか、どう感じているかを、顔色とか手振りとか、歩き方、話したから分かりました。なおかつどの辺が気に入らなくて、どの辺が気に入られていたかを、僕は分かりました。それが分からないとダメです。お客さんを案内して、表情、目の色、言葉の内容、それらの変化から、お客様がそのビルの気に入っている部分とそうでない部分、それらの理由。トータルとして気持ちが膨らむ方向でいっているのかどうか、ということが分からないと、ビルのマネジメントをやる資格がない。と言うと、ある人は世の中にいなくなっちゃうけれど。(笑)

やっぱり商売でビル経営をやっているわけだから、プロですよね、それで給料をもらっているわけだから、「同業の人よりも俺の方が上だ」という自負を持てるようにするにはどうすればいいかを考えて欲しいですね。だから例えば、自分たちよりいい仕事の仕方をしているような会社を見つけたとしたら、その会社がどういうビルのマネジメントをしているのかをたまには見に行くべきかもしれない。そしてマネジメントの良いところと悪いところを、部分部分について、同時に全体について、具体的に自分のやっているマネジメントとの違いを分からないと。どの水準のマネジメントをしているのか、コストはどうなっているのかなど、色んな優劣があるでしょう。でもお客さんは同じ地域の中でベターな方を選ぶわけですよね。例えば、車が欲しいと言ったときに理想があったとしても、どうしても必要であるならばある価格帯の中で車を選ぶしか無いわけです。それはビルも同じで、競争相手はどうなのかということを把握していることは重要です。

理想的なビルを設計、リフォームできればいいのだけれど、理想というのは難しいし残念ながら基準が無いですよね。ところが競争相手はいっぱいいます。要するにそこに勝てばいい。どの程度で勝てるか、競争相手という基準があればそれは設定しやすい。

例えば「こんなイメージの服を作りたいのだけれど」とデザイナーに個人が頼むとします。その時にその人は何となくぼやっとした作りたい服のイメージがあるのだけれど、具体的なイメージは到底持てません。ということは、本当に着たい服のイメージは明確には提示されていないということです。なんとなくフワッとしているのだけれど、それは自分自身の本当のニーズが分かっていないということです。そこでのデザイナーの仕事は、何度か会って話をしたり、よく観察する中でその人の行動形態であるとか生活の全体、趣味、方向性を鑑みて、それをバックボーンにして彼自身の本当のニーズを発見してあげることですね。この場合のデザイナーというのは、ビルでいうとビルのマネージャーになるわけですね。

リフォームの発注、コミュニケーション その1

最近のビルのリフォームに関する話ですが、築15,6年経ってテナントの決まり具合をもっと良くしたい。あるいは賃料を値上げしたいというときに、どのようなリフォームをしたら良いのか。それで絵が上がってきて、提案書が上がってきて、それを見に行ったのですが結局採用できるものはありませんでした。提案したのはうちが遣っている設計事務所なんです。

うちはビル毎で課長さんと担当者のペアが決まっていて、その下に営繕などがついてやっています。メインは担当者がやっていて、それを課長さんが補佐して、リフォームの計画を全部2人でやるという体制です。そこで想像するに、設計事務所さんの方に「こういう問題を感じているのだけれども、提案してくれませんか?」という様に、イメージと問題点だけを伝えるかたちの言葉を使ったのではないかと思いました、発注の仕方ですね。リフォームの基本プランを作ってもらうときにね。そこで推測を続けると、設計事務所さんがどのようなリフォームのプランを作ると家賃が上がるかとか、中小企業の社長さんが部屋を見にきて事務所を決めるときに、どのようなビルを設計すれば多少高い家賃を出してでも気に入って借りてもらえるのか。そういうことは、絶対に設計事務所さんは分かりませんよね。だって、事務所を探している中小企業の方々と設計事務所さんは付き合いがないからね。彼らが3年に1回とか5年に1回とか事務所を移るときに、選択の基準としてどういったところの加重平均でもって決まるのかとか、なんてことは設計事務所としては分析もしていませんよね。例えしていたとしても、その分析を中小企業のオーナーや大会社の総務担当にフィードバックするということもないでしょうし。設計事務所としては不可能だと思うんですよ。

それを「提案して下さい」なんていうのはおかしいですよね。設計事務所さんがそういう発注者とお付き合いしちゃうと、1円の金にもならないのに時間と金を取られちゃいます。そういう仕事の仕方をする人は社会にとって公害ですよ。(笑)

担当者に聞くと「具体的に説明しています。」というのだけれど、設計事務所には全然伝わっていない。「具体的に」という意味が全然わかっていない訳です。

例えばPM(プロパティ・マネジメント)やビルの経営を生業としている会社の担当者としては、ビルが古くなってどこをどうリフォームすれば、テナントさんがすぐに気に入って契約をしてもらえるか。あるいは賃料の更改の時も、きれいにするべき箇所が分かっていれば値上げにも応じやすい。あるいはリフォームをするべきところを分かっていれば、同じようなビルでも家賃を10%とか20%高く貸せる。そういった点を具体的に設計事務所さんに話をするべきです。良くない点とその改善方法、具体的な材料であるとか、その場所の見せ方やディテールなどです。そこで我々素人の知っている範囲の材料、人造大理石であるとか、それを例にしてイメージを伝える。それで材料に関しては、もっとコストが良くてイメージに合うようなものがあれば、探して頂きたいと。より具体的な例を挙げると、正面玄関を明るいイメージにするには、暗い石をつかうと光を吸収してしまって玄関の照度が上がらないから、白っぽい石をつかうとかである。基準階のトイレの場合だと、17,8年前の便器のデザイン、色もくすんでいるので変えたい、といったことです。

少なくともそのビルの担当者は、どのようなリフォームをするべきかを、そういう色々な個々について、すべての基準階の壁、天井に対して材料であるとかを、すべて指示しなくてはなりません。それに基づいて最終的に設計の基本プランを描いて下さいと頼まないと。

うちは経営代行をやっているわけなので、ビルのオーナーさんに対して最初に説明する絵が必要です。どこをリフォームして、どの程度の予算がかかって、でもその分の家賃はどれだけ上がります、ということですね。理想とすれば、A1の図面に全部表現できればいいですね、1枚の絵ですべての説明が出来るようなかたちで。最初はオーナーさんの了承を得るための絵なので、リフォームする必要な場所を表現できればいい。それで仕様書などは空白部分に特記でもって、書いてもらえればいいですね。あとは概算でどの程度かかるのか、箇所箇所でもって設計単価で構わないので書いておく。最終的には30-40%引きになります、といったコメントを添えてです。ビルの規模によってA1に納まるような縮尺は違ってくるけれども、1枚の絵でぱっと見られれば、お客さんの方も分かりやすいし。

それで行きましょうということになれば、あとは業者に発注するための詳細な図面を描かなくてはならないですね。ステップとしてはその2つです。最初、ステップ2は置いておいて、まずステップ1でどの程度費用がかかって、時間的にはどの程度かかるのか、ということを設計事務所さんの方から見積りをもらえばいいわけです。そのように指示をすれば、設計事務所さんも迷う必要がないですよね。それ以上、現地に行って考える時間も必要なくなる。ただ仕上げ関係については、それ以外に目的を達成するためのもっといい材料があるのであれば、探して提案して下さい、ということです。ただ照度であるとかは、ビルの経営の代行者が具体的な指示を出さなければいけないところですね。そうすれば、無駄な経費もかからないであろうし、設計の日数も最短で済むだろう、と。

ニーズと市場

貸事務所の仲介がスタートでした。その会社、つまりお客さんにどのようなニーズがあるのかを把握して、そして市場が実際にどうなっているのかを把握するということ。市場にどのような商品があるのかを実際に調べて、お客さん自身のニーズがどうなのか、それらの調整役をするわけです。ただしお客さん自身が自分のニーズを分かっていないんですよ。例えば、服を買うときにデパートに行ってパッと決められる人は少ないですよね。購買者が自身の本当のニーズが分かってないからです。そういう意味でいうと企業だって同じで、いろんな物件を見たり、ディスカッションしたりしないと自分自身の本当のニーズには辿り着かない。その先導役をするようなものですね。そういったことを3年10ヶ月やって、会社を創りました。