*ーある予言者の言葉 カーリル・ジブラン(金関寿夫訳)ーより

互に愛し合うがよい、

だが愛のちぎりなど、

決して結んではいけない。

きみたちの魂の岸辺、

そのあいだに波立つ海を置くのだ。

互に盃を満たし合うがよい、

だが同じ盃から飲んではいけない。

互にパンをわかち合うがよい、

だが同じかたまりから食べてはいけない。

共に歌い、踊り、笑いさざめくがよい、

だが、互にひとりだということを忘れてはいけない。

同じ楽の音に震えてはいても、

琴の糸は、一本ずつ分かれているのだから。

きみたちの心を与え合うがよい、

だが互にそれを我がものにしてはいけない。

共に立つがよい、

だがあまり近寄って立ってはいけない。

寺院の柱は離ればなれに立ち、

樫と杉とは、

互いの影の中に育つことはないのだから。