<詩の中にめざめる日本、真壁仁著 1967.1.10購入>より

20才の時に出会った わたしの好きな詩

 

二つの森 長尾 登

 

一つの川を挾んで

二つの森が向合うように

一つの家の中の

二つの魂はさびしい

 

雪の降りつもる日

相手の森の遠い日の秘密に

じっと心を凝らす

二つの魂のかなしい習癖

 

疑うことによってたがいの距離を測り

憎むことによってたがいの存在を確め合う

一つの川を挾んだ

二つの森

 

山鳩が鳴く

たがいの森から啼く

心でなければ解し得ぬ

言葉の原型で啼く

心をもってしても解し得ぬ

たがいの森の魂で啼く

 

愛の訴えが

虚しい木霊となって消える

一つの川を挾んだ

二つの森