8-5. 地区計画・総合設計制度 (13)

さてここでいう「土地の共同化及び大規模化による」合理的な利用というのは現在の総合設計を想定するといまいちピンときませんが、東京都がインターネット上で公開している総合設計プロジェクト一覧の一つ目をみるとその意味が少し分かるような気がします。ちなみにこの条項は1970年に建築基準法に制定されているようです。そして東京都における一つ目のプロジェクトは意外にも都心の再開発ではなくて、昭和51年(1975)11月15日に許可された「日野大久保団地」という日野市における共同住宅のプロジェクトでした。とてもゆったりとした敷地の中にぽつぽつと住棟が並んでいるような典型的な郊外の団地です。ここでは建築基準法の第55条が緩和されているのですが、その内容は第一種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域における絶対高さ制限についてでした。つまり一般的に一種住専の地域では10mの最高高さを超える建物を建ててはならないのですが、ここでは当時の公団の仕様に従って4階建てを建てたいがためだけにこの総合設計制度を利用したとのことです。これが「土地の共同化及び大規模化による」合理的な土地利用ということで、公団モデルの団地を想定していたことが分かります。ただし、そのことによってどの程度メリットがあったのかというと、疑問が残るところですね。誰にも迷惑をかけてはいなさそうなので別に良いのですが…。

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