4-16. 空調機 (3)

さてお湯を利用した暖房設備でいえば、西欧では未だに使われているのがラジエターを利用したセントラルヒーティングのシステムです。

図4-16-2:ラジエター

図4-16-2:ラジエター

西欧の都市部では集合住宅が多く、暖房設備を分散させるのではなくて1ヶ所に集中させるセントラルヒーティングのシステムは日本と比べれば普及しているように思います。元々は北欧の方で、発電所でタービンを廻すために作られる蒸気を、そのまま各建物に供給することから始まったようで、各建物ではボイラーによって蒸気の熱を温水にして、そこから生活用の給湯と暖房用の給湯が供給されたようです。システムとしては発電所に限ったことではなくて、ゴミ焼却場からでる廃熱で蒸気を作って、それを周辺地域に供給するというものもあります。地域レベルでの暖房、即ち地域暖房で、筆者もパリ時代に一時期そのようなアパートで生活していましたが、冬でも非常に暖かく快適に過ごすことが出来ました。エアコンと違いラジエターからの輻射による暖房なので空気が乾燥することが無く、組積造の建物の躯体そのものが暖まるので、快適な環境をつくることが可能です。また供給は一般的には24時間なされるので(費用は一律)、帰宅時に部屋が暖まるのを待つなんてことはありませんでした。このシステムは建物の躯体を暖めるので、断熱性能が高い建物の方が効率的です。日本の建物は薄っぺらいものが多く、断熱性能は相対的には劣っているのでこの方式はあまり定着しないのかもしれません。

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