5-8. コンクリート (19)
ここまで力学的なコンクリート技術の可能性について考えているのですが、それらはコンクリートの組成からの発想です。ところでコンクリートの建物はそもそも自重が重いという特徴があります。2,400kg/m3です。ところで鉄は7874kg/m3ですからコンクリートよりも重いですが、そもそも断面積を小さくしているために長さあたりの容積を減らしているという特徴があります。建築に使われる主な梁材料としてH鋼を使っているのは、鉛直方向の荷重に対して、H鋼の形状が重さあたりの強度という点において優れているからです。(以前に「鉄」の稿でも多少述べています。)つまりコンクリートにおいても同様の発想が出来るのではないか、ということで考えられているのが「ヴォイドスラブ」というものです。
上の写真はコンクリートが打設される前の状況ですが、このように発泡スチロールの球体を並べることによって、断面的に中空の状態にします。そうするとその部分で考えてみればいわば鉄骨と同様にHのような形状が並ぶことになり、スラブ全てが梁として力学的に考えられるということです。一般的には梁の上にスラブが乗るという格好になり、梁が室内にでてしまいますが、この工法ならばスラブ全体の厚みは増しますが、一方で部分的に梁によって天井高が下げられるということが無くなってきます。
このようにコンクリートを型枠に流すという施工方法から、ある程度自由に形状をコントロール出来るのがコンクリートの特徴なので、力学的に有利な断面形状をつくるというのがコンクリート技術の1つの可能性でもあります。先般に紹介した、HPシェルなどもその一例です。
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